2015年4月27日月曜日

核兵器と戦争 4

 2010年9月尖閣諸島近く日本の領海内で海上保安庁の巡視船に中国漁船が体当たりした事件が発生した。
 この事件直後中国の海軍と日本の海上自衛隊の艦船はそれぞれの後方に待機していていて決して全面にでてくることはなかった。
 南シナ海のパラセル(西沙)諸島、スプラトリー(南沙)諸島では中国海軍が前面に出て権益むき出しの行動に出たが、尖閣諸島では後方待機に終始した。
 少なくとも中国海軍は海上自衛隊の戦力をフィリピンやベトナムの海軍と違うとこをはっきりと認識していた。

 アジアにおける中国の派手なプレゼンスにもかかわらず、必ずしもそれが実態を反映しているとは言い難い。
 親しく米軍および米軍の中国戦略を取材した日高義樹氏は中国の間違いを指摘している。

 「中国の指導者たちは、経済を拡大しアメリカとの経済関係を強化していけば、オバマ大統領の協力によって政治力を手にすることができると考えた。
 あとは軍事力を強化すれば、世界を動かすことができると思ってしまった。そして中国は軍事力増強の道を走りはじめた。
 ここまでであれば、まだ中国の間違いやオバマ大統領の思い違いを修正することは可能であった。
 だが中国は貿易で稼いだ莫大な資金を使って、ロシアの古い空母を買い、潜水艦を増やし、核兵器をつくりつづけた。
 しかし兵器を増やすだけで、国際的な影響力が強くなるなどということはありえない。
 中国は軍事力を拡大するとともに、自国が世界的な力を持ったと錯覚した。
世界の列強と言われた国々が行ったような膨張侵略政策をとり、周辺の国々に圧力をかけはじめた。(中略)
 経済力を政治の力にするのが難しいことは、日本を見れば明白である。
 また経済力があるからといって、強い軍事力を簡単に持てるわけでもない。
 強力な軍事力を持つためには国家体制を整備し、国民を訓練し、技術力を向上させて強力な兵器と強い軍隊を持たなければならない。
 中国はそのすべてに欠けている。中国は安い商品を世界中に売ることによってGDPを拡大し、世界第二の経済力を持つようになった。
 中国はそれがそのまま中国の国力になったのだと誤解した。
 中国は貿易で稼ぎ出した資金を使って兵器を買い集めているだけである。
 中国が強力な軍事力を持っていないことは、いまや誰の目にも明らかである。」
(日高義樹著PHP研究所『中国、敗れたり』)

 日高氏は同書で中国軍の弱点、特に海軍兵装の弱点を具体的に指摘している。

 「 『もし中国と日本の艦船同士が戦闘をすれば、中国側はみな撃沈されるでしょう。
 日清戦争の際の海戦と同じ結果です。ただしこの種の日本側優位の展開は戦闘の冒頭だけではありますが・・・・・』 
 東シナ海の艦船同士の戦いに限っていえば、ということだろう。だがパール氏(ダグラス・パール カーネギー国際平和財団副所長)はそこで一息ついて、もし日中が戦争を始めれば、日本にとって悪いこと、不利なことも多々起きる、とつけ加えた。
 具体的にはおそらく中国側のミサイルを念頭においての発言だろう。
 なにしろ中国は日本全土を射程におさめた弾道ミサイルや巡航ミサイルを数百単位の基数、配備しているのだ。そのうえに中国は核兵器をも保有する軍事大国なのである。
 同盟パートナーである米軍という強力な盾があってこそ、日本側の対中抑止力も効果を発揮するが、日本独自では話にならないのが現実だろう。
(古森義久著小学館新書『中国の正体を暴く』)

 尖閣諸島をめぐる海戦のみに限っては現時点では日本有利の見方が優勢のようだ。
 仮に緒戦でそのような結果になった場合その後の展開はどうなるか。
 まず敗北の責任の矛先は軍さらに共産党政権に向かう。
 戦後一貫して反日教育をうえつけられた中国人民が緒戦の敗北のまま和平に得心するとはとても考えられない。
 軍と共産党政権は戦線を拡大し反撃するか和平かの選択を迫られる。
 共産党政権はその威信と存立にかけて戦線拡大・反撃の選択肢をとるであろう。
 平時でさえ安定しているとはいえない中国の治安は、かかる事態を迎えては収拾つかなくなるからである。戦線拡大によってのみ治安は保たれる。
 しかし戦線拡大が米軍の介入を招いたら中国に悲劇をもたらす。米中の戦力差が乖離しているからである。
 したがって中国は米軍が介入しない程度に戦線を拡大することだけが選択肢となる。しかしそのようなことがはたしてできるか。
 日本における米軍基地とは無関係に戦線拡大など絵空事にすぎないのではないか。
 尖閣諸島をめぐる緒戦での中国軍の敗北は、その後の展望が拓けず共産党政権自体の存立を脅かすことにつながりかねない。
 ここで最も危険なシナリオは、共産党政権が自身の存立が危ういのであれば、座して崩壊を待つのではなく、米中戦争の賭けに出ることである。
 そうなれば核戦争の入り口に立つことを意味する。愚かにもそのような賭けをするとは思えないが・・・・・。

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