2015年4月20日月曜日

核兵器と戦争 3

 尖閣諸島は1895年明治政府により正当な手続きで領土編入され日本固有の領土となった。
 それから一世紀近く経た1968年国連による同諸島付近海底調査で石油や天然ガス埋蔵が確認されるや俄然中国は領有権を主張しはじめた。
 中国の鄧小平は1978年訪日の際、尖閣諸島について 「次の世代は、きっと我々よりは賢くなるでしょう。そのときは必ずや、お互いに皆が受け入れられる良い方法を見つけることが出来るでしょう。」 と棚上げを提案した。
 日本政府はこの鄧小平発言は一方的な発言であり決して受け入れたわけではないとしながらも、尖閣諸島は日中で暗黙のうちに事実上棚上げされてきた。
 ところが2012年9月日本政府による国有化を機に尖閣諸島は一気に日中の紛争の場と化した。
 尖閣諸島問題は今や一触即発、日中に横たわる最大の懸案となった感がある。
 日本が固有の領土であることをを証明する古地図を発見したと言えば、中国は中国固有を証明する地図など何百枚でも出せるといって反論する。
 この紛争はどのように解決されるのだろうか。あるいは未解決のまま放置されるのだろうか。
 中国の核兵器がこの問題を解く重要な要素となろう。もし中国が核武装していなければ、戦争で解決するということも考えられないわけではない。
 だが今や中国は核武装している。中国の核戦力はどの程度か。
 中国は公式には保有する核戦力の実態を明らかにしていない。米議会の諮問機関である米中経済安全保障調査委員会の年次報告書から中国の核戦力の一端を知ることが出来る。
 またこの年次報告書から中国の軍事力はアメリカにとっても脅威であることが分かる。

 「中国の核ミサイル能力などが今後5年で急速に近代化することで、中国の軍事・外交面での能力が広範囲に強まると指摘。  『米国の核抑止力、とりわけ日本に対する部分が潜在的に弱まる』 と警鐘を鳴らした。
 報告書は、習近平(シーチンピン)国家主席について 『外交・安全保障面における積極的で、時には攻撃的ともいえる姿勢が彼の特徴だ』 と分析。
 尖閣諸島を含む東シナ海での防空識別圏設定や南シナ海での一方的な油田開発などを列挙し、『(習氏は)過去の政権よりも、二国間関係で格段に高い緊張を引き起こすことをいとわないことがはっきりしてきた』とした。
 さらに、『東アジアの同盟国を見捨てて中国に融和姿勢をとるか、同盟国を守って紛争の危機に直面するかを米国に選ばせようとしている』と警告した。
 核戦力については、射程が約7千キロを超す潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)『巨浪2』が初期運用能力を得たとし、『中国は初めて海からの核抑止力を手に入れた』と分析した。
 巨浪2はハワイ東部から発射すれば米全土を射程に収め、今後3~5年の間に巨浪2を搭載した原子力潜水艦を最大5隻配備すると予測。
 米全土を射程に収める移動式の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験も実施したとし、米国にとっても脅威が増していると分析している。」
(2014年11月21日ワシントン=奥寺淳)http://www.asahi.com/articles/ASGCP5557GCPUHBI01Q.html

 このように中国は世界最大の軍事力を誇るアメリカに対しても脅威を与えるほどの軍事力を備えた。
2014年防衛白書の資料からもそのことがうかがえる。       
                      (下図 資料1、資料2)

 毛沢東の号令のもと、1963年中国の陳毅外交部長が「中国人はたとえズボンをはかなくても、核兵器をつくってみせる」 と日本のジャーナリストに語ってから半世紀、とうとうここまで成し遂げた。
 アメリカにとって脅威なのは ICBM DF-31(射程距離8000~14000km)とDF-5(射程距離12000~13000km)がアメリカ全土を射程距離にとらえていることである。

資料1の表
資料2の表

 単純な物量兵力は中国が日本に対し陸上で11倍、海上で3倍、航空で6倍である。
 この物量の差は日中の軍事予算の推移から今後さらに拡大する傾向にある。しかも核武装の中国にたいし日本は非核三原則を堅持している。

 このような両国が仮に尖閣諸島で武力衝突したらその帰趨はどうなるか。
 単純に日本敗北とは限らない。戦争は物量のみで決まるわけではない。
 2012年8月米海軍大学校のジェームズ・ホルムズ准教授は雑誌『フォーリン・ポリシー』で尖閣諸島をめぐってアメリカが介入せず日中のみで武力衝突となった場合、日本有利と予測している。
 この予測の当否はさておき、かりに中国が敗北したらどうなるか。また日本が敗北したらどうなるか。
 この2つのケースを核兵器時代の戦争の具体例として考えてみたい。

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