2014年7月28日月曜日

移民政策 5

 1972年にローマクラブが発表した「成長の限界」で人口は等比級数的に増加するが、食料は等差級数的にしか増加しない。
 このため地球の成長は人口増加と環境汚染で100年以内に成長の限界に達すると警鐘を鳴らした。
 1970年日本の人口は約1億500万人であった。当時でさえ人口密度は高すぎると言われた。わずか42年前である。
 そして今、先進各国は人口減少は成長の妨げとばかりに少子化対策や移民政策に熱心である。
 変わり身の速さといえば聞こえはいいが、まるで健忘症ではないか。
 なぜこのようなことになったか。経済は永遠に成長し続けなければならないという脅迫観念にでもとりつかれたのかもしれない。
 現実の問題として労働力人口の減少と社会保障費負担の増大が目の前に迫り懸念されている。

 まず労働力人口の減少から

 労働人口の減少で現在の経済活動が維持できなくなるといわれている。
 が、人口変動を専門に研究している古田隆彦氏は、江戸中期の人口は1732年の3230万人をピークに、集約農業文明の限界と連続した大飢饉が重なり、子供を作るより自分を守るという本能的な人口抑制装置が作動し以後60年に渡って減り続けた。
 人口は減ったが生産性を上げることによって米の生産量は変わらなかったと言う。

 「江戸中期だけでなく、14世紀のヨーロッパでも同じことが起きています。このときの原因はペストです。
 1340年頃に約7400万人に達したヨーロッパは、ペストが大流行し、たった10年間で約5100万人に激減するのです。
 この後も減り、人口が回復するまでに150年かかっています。
これだけ働き手が減っても農業生産量は保たれていたのです。江戸と同じように工夫によって労働生産性を上げたのです。
 イギリスでは人口の4割が減ったため、農業労働者の雇用賃金は高騰して、2倍になり、15世紀には農業労働者の黄金時代を迎えます。
 ペストによって結果的には個人所得と生産性が両方共に上がったわけです。
 この時代に比べればいまや工場は自動化、ロボット化され、労働生産性をさらに上げることは可能でしょう。
 仮にGDP(国内総生産)がゼロ成長になっても、生産性を上げていけば、人口が減る分だけ個人所得は増えて、生活水準は高くなるのです。」(NIKKEIBP NET人口減少影響解説インタビュー2005.9.5)

 次に社会保障費負担増大について

 社会保障費負担増と少子化については、社会保障費とくに年金制度との関係で検討されるべき問題である。
 日本の公的年金制度は戦後積み立て方式からスタートした。積み立て方式の年金制度は人口の増減との関連性はない。
 少子化との関連性が言われるようになったのは年金積み立て方式の破綻がきっかけであろう。
 花澤元厚生省年金課長が自身の厚生年金制度回顧録で臆面もなく「集めた年金保険料はどんどん使って、後で年金支払いのときに困るようなことになれば、賦課方式にすれば良い」と言った。
 AIJ投資顧問の200億円以上の年金の損失は社会問題になったが、厚生省の年金積み立て欠損は90兆以上ともいわれ、「巨悪は眠る」を地でいくストーリだ。
 年金問題の実態は未だ全貌が明らかにされたとは言えず、社会保険庁が悪かったとか管理が杜撰であったとか問題が矮小化されたままである。
 このような場合、真の原因は他にある。花澤元厚生省年金課長の上述の言などは、その一つである。
 最近になって少子化で人口減少がクローズアップされると、外国人労働者を受入れて、労働力人口を増やし年金制度を維持すべしとの論調が目立つ。
 が、外国人労働者は年金制度維持に役立つどころか破綻に拍車をかける。
 少なくともドイツの例では、
 「社会保障費を補填してくれるはずだった外国人労働者たちは、多くのケースで、それを食い潰す存在になった。」(川口マーン恵美著講談社+α新書『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』)
 ヒトはモノのようには扱えないのだから自然の帰結といえる。
 この点でもドイツは反面教師となる。

 労働力人口の減少や社会保障費負担増から派生する問題は、少子化問題を解決すればすべて解消するなどといった短絡的な考えでは通用しそうにない。
 急がば回れ。さすれば解決の糸口も見出せよう。

2014年7月21日月曜日

移民政策 4

 次に移民政策反対論について
 経済評論家の三橋貴明氏は、移民政策反対の急先鋒である。メディアに頻繁に登場し自説を展開している。
 彼は移民に繋がる外国人労働者受入れ反対の理由を次のように言っている。

 「外国人労働者を大々的に国内に導入すると、当たり前だが『日本国民』 に技術やノウハウ等が蓄積されることはない。
 さらに、労働市場の競争がまたもや激化することになり、国民の所得は増えない(むしろ減るだろう)。
 人件費を削減し、利益を増やせる経営者や株主は嬉しいかもしれないが、日本の『国民経済』にとっては最悪だ。」(三橋貴明著講談社『あなたの所得を倍増させる経済学』)

 外国人労働者が増えれば、労働者全体の実質賃金が下がり、国際競争力・価格競争力が高くなる。
 が、そのことによって利益を得るのは一部の経営者と株主だけであり、その他国民は所得減になりいいことはない。
 さらに、外国人労働者が増えれば別の問題も発生するという。

 「世界屈指の自然災害大国日本において、土木・建設の供給能力を『外国人』に頼ろうという発想が理解できない。
 わが国の土木や建設の需要を『日本国民』では賄えないとなると、いざ非常事態が発生した際に『誰も被災者を助けることができない』事態に至りかねない。
 『外国人』に自国の安全保障を委ねる国など、中長期的に存続できるはずがない。
 日本のような自然災害大国にとって、土木・建設の供給能力の維持は、完全に『安全保障』の問題なのである。」(前掲書)

 技術の伝承といえば、20年に一度の伊勢神宮の式年遷宮がある。
 「唯一神明造」という1300年の歴史を有する日本最古の建築様式は、これによって維持されてきた。
 もし仮に外国人労働者が土木・建設作業の大半を担ったら日本人労働者はこの分野から駆逐されこの分野の技術の伝承も途絶える。
 ドイツの事例が参考になる。ドイツでは約2割を占める外国人労働者が担った業種はドイツ人がやらなくなり結果的に駆逐されてしまった。

 「日本に帰ると、元気そうなお年寄りが、スーパーの駐車場の前で車の誘導をしている姿をよく見る。
 リタイア後のアルバイトだろうが、ドイツなら絶対にドイツ人のしない仕事だ。
 こういった仕事を日本人がしているという事実が、どんなに素晴らしいことかを、日本人はもっと自覚すべきだ。
 そのうえ日本の労働現場は、幸いなことに、合理化だけに縛られていない。
 ホームに立って乗客の安全を確認する駅員とか、駐車場へ出入りする車の交通整理をする係員とか、工事現場の横で歩行者が安全に通れるよう誘導する人など、ドイツ人が聞いたらびっくりするような仕事も多い。
 ドイツなら、こういう職は経費のせいで絶対に消えているはずだ。(中略)
 移民や外国人労働力の導入は国の活力にもなるが、それは双方に長期的な利益があってのことだ。
 単に賃金が安いからという近視眼的な理由で、安易に外国人を入れ続けると、いずれ労働市場は破綻する。
 また、外国人労働者側の不平等感が募り、社会不安をも招く可能性は高い。
 ドイツは反面教師になるはずである。」
(川口マーン恵美著講談社+α新書『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』)

 現政府が外国人労働者受入れに積極的なスタンスと採っている中、内閣府参与 藤井聡 京都大学大学院教授はこれに慎重であるべきと言っている。
 藤井教授の外国人労働問題の考えは


(A)日本国民が必要とするもの(内需)は、日本国民で賄う(供給する)のが基本。
(B)それが「どうしても無理」ならば、外国の力(供給力)を「お借り」する。

 が基本前提であり、これに異を唱える人は少ない。
 外国人労働者に頼るにしても、国内の労働力が十分に活用されていることが前提となるが、現状はこの前提は充たされているとは言い難いと言う。

 この前提を軽視或いは無視して安易に外国人労働者に頼るのが昨今のグローバル企業である。
 グローバル企業が主役を演ずるのがグローバル資本主義である。
 ここで改めてグローバル資本主義について考えてみたい。
グローバル資本主義は、国境を前提としない。
 グローバリゼーションの実験場とも言えるEUでは、様々な矛盾が噴出し「反EU・反グローバリゼーション」の極右政党が台頭している。
 グローバル企業は安価な外国人労働者受入れでコストを削減し価格競争力が高くなり利益を得ることができる。
 だが大多数の国民にとって、安価な外国人労働力の受入れは得るものよりも失うものが大きい。
 グローバリズムについて藤井教授は次のように指摘する。

 「グローバル資本主義のもとでは、世界各国がいろいろなリンクでつながるので、ある国で作ったものが別の国にすぐ輸出でき、情報もすぐに共有できる。
 これは要するに、危機が発生すれば、それもたやすく他の国に輸出されるということです。
 逆にいえば、危機が外国で起こると簡単に輸入されてしまう。
 したがって、リーマンショックが起こったとき、世界中が共倒れになったわけです。
 さらに、グローバルな資本主義化、自由主義化の帰結を、地域的な領域ではなく分野的な領域で考えてみましょう。
 自由化をとことん進めると、『カネがものを言う世界』がグローバルワイドに広がります。お金で片を付ける風潮が蔓延し、お金に換算できないものは見捨てられていく。
 たとえばセキュリティは、お金ではなかなか十分に取引できない。
 極端な例で言えば、『戦争』はマーケットでは扱えない。
 資本主義がどんどん膨らんでいくと、安全保障はだんだん無視されていく。
 また、マーケットは短期的な情報は織り込みますが、長期的な合理性については軽視され、最終的に無視される。
 長期的な合理性が低下すると、社会そのものが脆弱化します。わずかな危機、たとえば一つの企業の倒産で、社会が大きなダメージを受けてしまうのです。
 そして、お金で何もかも片を付けようとする社会では、民主主義の力が弱まります。
 国家の価値、家庭の価値が溶けていき、文化や伝統、美徳や倫理が蒸発していくのです。
 結果として文明の低俗化が進んでいくのは物の道理です。
 このように、グローバル資本主義が世界中で進めば進むほど、経済は不安定化し、格差は拡大し、貧困は固定化し、危機はグローバル化し、民主主義が脅かされ、そして金銭以外のさまざまな価値があらかた洗い流されていく。」(文春新書『グローバリズムが世界を滅ぼす』から)

 グローバリズムは、ヒト、カネ、モノの自由な移動をいう。ヒトだけが例外などあり得ない
 生命力の強い外来種の動物や植物が在来種を駆逐するように、外国人労働者は、日本人労働者を駆逐する。安価な労働力を求めるのは企業にとって自然な行動である。
 短期的な成果を求めて労働市場の自由化の名のもとに非正規労働者が増え社会が不安定化しついには民主主義まで脅かすに至る。

 このような事態に至ることが見越せれば藤井教授の考えは浸透するだろうが 「時すでに遅し」 になりかねない。

 なお、人口問題では 「人口減少は悪」 と、当然のように論じられるが、これに異を唱える見方もあり、この視点からの考察も欠かせない。

2014年7月14日月曜日

移民政策 3

 内閣府の「目指すべき日本の未来の姿について」 で 「移民受入れ、例えば毎年20万人」 が明るみになった途端、一部から猛烈な反対の声が出た。
 これに対し政府は技能者・技術者受入れは移民ではない、移民政策は採らない、と打ち消しに躍起となった。
 だが政府の諮問機関 産業競争力会議の民間議員である竹中平蔵氏は、


 「10年~20年のタームだと、移民を受け入れればいいんですよ。それで、普通はアメリカでもオーストラリアでも成長戦略を議論する場合には、必ず最初に移民の問題を議論するんです。(中略)
 毎年毎年、2030年を過ぎると日本の人口って100万人強減ってくるんですよ。
 そうすると、たとえば私の学生、とくに女子学生なんかに『いちばん欲しいものは何か』と聞くと、ほとんどの人がメイドさんだって言いますね。だって自分が働くには必要ですから。
 ただし、ルールをちゃんとしないと社会が混乱するというのも事実ですよ。
 だから、ちゃんと議論しましょうと私は言っているわけで、無条件で受け入れるなんてことはできないですが、そんなふうにタブーを作っちゃいけないんですよ。
 さっきの解雇の話もそうですが、タブーを作るべきではないし、タブーを作るのにひと役買っているのはメディアなんですよ。」(2013年7月16日現代ビジネス『田原総一郎X竹中平蔵対談』)

 と言っている。

 竹中氏に限らずグローバル資本主義に肯定的な立場の人は、外国人労働者の積極的受入れ・雇用の流動化を推進している。  そして今やこの議論が、坂中英徳氏のように正面から向う50年間で1000万人の移民をとの主張よりも、より強力な世論を形成しつつある。

 なにより産業競争力会議合同会議での出席大臣の発言がそれを雄弁に物語っている。
 各大臣の発言内容は竹中氏の意見が色濃く反映されている。

 (以下 経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議における議論の概要  2014年4月22日 内閣府 資料2から
                          
 3月19日 第3回経済財政諮問会議、第1回経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議

長谷川産業競争力会議雇用・人材分科会主査提出資料(抜粋) 

・ 親族の介護等も含め家庭の事情から、働きたくても働けない人に対して働く機会を与えるためにも、家事支援サービス事業を支援する政策は不可欠である。
 また、将来的な人材不足に備え外国人の活用も視野に入れる必要がある。
 そのため、人材育成を含め、サービスの品質を担保する仕組みをつくり、信頼性の高い市場を構築していく。例えば、介護、育児・家事支援などの分野で一定の資格や技能をもつ外国人に在留資格を与えられるようにすべきである。 
・ なお、外国人活用については、先ずは国家戦略特区で、管理体制を整えた上で、外国人による育児・家事支援サービス提供事業を試験的に許可して事業を開始させ、どの程度の需要があるか等を見極めてから拡大の必要性を検討する。 

 4月4日 第4回経済財政諮問会議、第2回経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議 

有識者議員提出資料(抜粋) 


・ 高度外国人材の受入環境を改善するとともに、多くのわが国女性の潜在力を発揮させる観点から、育児・介護中で就業希望しているが就業できない女性(220万人強)等のため、家事の補助・介護分野での外国人のサポートも検討すべきである。 

長谷川産業競争力会議雇用・人材分科会主査提出資料(抜粋) 

・ 安倍政権の重要政策の一つである「女性の活躍推進」に向けて、育児・介護中の男性・女性の負担・制約を解消していくためには、家事等の負担を軽減し、「働きたくても働けない」人が働く機会を得られるような環境整備を進めることが必要である。
 その際、外国人家事支援人材の活用は一つの方策である。 
・ こうした現下の経済活動において喫緊に対応が必要とされる分野において、全国一律での対応が困難な場合には、先ず国家戦略特区で監理体制を整えた上で、可及的速やかに先行実施し、どの程度の需要があるかを見極めた上で拡大の検討を行うべきである

 出席大臣の発言要旨

(第4回経済財政諮問会議、第2回経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議) 


茂木経済産業大臣 

・ 女性が活躍できる環境という点から家事支援が極めて重要になってくるのではないかと思う。 

谷垣法務大臣

・ 家事支援等については他の労働市場や治安への影響などを考える必要がある。
 低賃金労働として受け入れているとの批判があってはいけない。
 家事支援の外国人活用は、特区などで試してみることも一案。

田村厚生労働大臣 


・ 外国人労働者の活用に当たっては、アベノミクスの賃金上昇に向けた動きを阻害しない、日本人が駆逐された職場とならない、労働条件が日本人と異なるものとならないということが必要である。 
・育児・家事支援の外国人活用については、ニーズを踏まえた検討を行うことが必要。 
・ 育児支援については、人格形成期に我が国の言語や文化を十分に理解されていない外国人の方々が携わるのは問題があるのではないか。 

新藤総務大臣(国家戦略特区担当大臣)

・日本において、特区で家事や介護支援を実験し、証明することが必要であり、取り組んでいきたい。 


安倍内閣総理大臣

・ 本日の議論を踏まえ、移民政策と誤解されないように配慮しつつ、女性の活躍推進や中長期的な経済成長の観点から、十分な監理体制の下での更なる外国人材の活用の仕組みについても、検討を進めていただきたい。
 その際、国家戦略特区の活用も含めて検討していただきたい。 

 今や外国人労働者受入れは国策となりつつある。


2014年7月7日月曜日

移民政策 2

 まず移民政策賛成論から
 移民政策の代表的な論者の一人は、元法務官僚で移民政策研究所長 坂中英徳氏であろう。
 彼の主張は 内閣府の 「目指すべき日本の未来の姿について」 で技能者、技術者中心に移民受入れ(例えば、年間20万人)に反映されている。
 彼は、法務省在籍時の各地入管局長の経験から日本の人口減対策には移民による他ないと断言している。
 その要点は

1 東京オリンピックが開催される2020年までに、日本は移民国家としての基本的な制度を確立すべき

2 向こう50年間で1000万人(毎年20万人)の移民を受け入れるべき。

3 人口減による年金・社会保障制度崩壊は、1000万人移民により解決される。

4 日本型移民政策による。日本語教育・職業教育を徹底し人材を育てる。充分に教育すれば移民の犯罪もなくなる。

5 介護・福祉、農業・林業・漁業は待ったなしの緊急の課題。2020年東京オリンピックに向けての建設業も移民が必要。

6 最大の課題は製造業。大企業を支えている中小企業が後継者難でつぶれている。モノづくり能力がなくなったら日本は滅亡する。これを支えるには移民しかない。

7 日本はもともと雑種文化である。宗教、国際結婚にも寛容である。希望すれば移民に国籍を与え日本を多民族共生社会にする。


 政府関係では、内閣府の経済財政諮問会議・産業力競争会議の一つ 成長・発展ワーキング・グループが、外国人労働者の受入れを打ち出している。
その骨子は

 人口減少社会への突入を前に、労働力人口を維持・労働生産性を上げていけるかどうかが、日本が成長を持続できるか否かの鍵である。
 このための一環として多様な価値観や経験、技術を持った海外からの人材がもっと日本でその能力を発揮してもらいやすくする。具体的には

(高度外国人材の活用)
① 高度外国人材受入環境の整備
人材の獲得競争が激化する中、日本経済の更なる活性化を図り、競争力を高めていくためには、優秀な人材を我が国に呼び込み、定着させることが重要である。

(外国人技能実習制度の見直し)
 外国人技能実習制度については、その適正化を図るとともに、海外における人材需要等の実態を踏まえた必要な見直しを以下のとおり進める。
 ② 外国人技能実習制度の抜本的な見直し
 国際貢献を目的とするという趣旨を徹底するため、制度の適正化を図るとともに、対象職種の拡大、技能実習期間の延長、受入れ枠の拡大など外国人技能実習制度の抜本的な見直しを行い、所要の法案を提出する。

 (持続的成長の観点から緊急に対応が必要な分野における新たな就労制度の検討)
③ 製造業における海外子会社等従業員の国内受入れ


④ 女性の活躍推進、家事支援ニーズへの対応のための外国人家事支援人材の活用

⑤ 介護分野の国家資格を取得した外国人留学生の活躍支援等


(中長期的な検討等) 
 中長期的な外国人材の受入れの在り方については、移民政策と誤解されないように配慮し、かつ国民的なコンセンサスを形成しつつ、総合的な検討を進めていく。 
 なお、外国人材の活用を進めるに当たっては、基本的な価値観を共有する国々との連携を強化するという観点も踏まえつつ、取組を進める。
(「日本再興戦略」改定2014 -未来への挑戦ー 平成26年6月24日 から)

 このワーキング・グループが外国人労働者受入れを打ち出している前提は、日本が 「新しい産業が育っていない極東の静かな国」 ではなく 「新しい産業が育って国際社会で活躍し、ヒト・モノ・カネ・情報が集まる国」 を選択することであり、その論拠は次のとおり。

1 日本は急激な人口減少が進んでいる。震災復興や2020年東京オリンピック・パラリンピックをまえに労働力不足は特に深刻である。

2 人口減対策として、女性が子供を産みやすくする環境に努力しているがとても間に合わない。

3 労働力減対策として、女性の活用・高齢者の活用に努力しているがとても間に合わない。

4 高度外国人材は日本経済の活性化と競争力強化につながる。

5 高度外国人材以外の外国人材は労働力減対策とともに国際貢献にもなる。

 1~3 は外国人労働者受入れ論拠の前提条件であり、差し迫った問題でもある。
 問題となるのは4~5 である。
4 の高度外国人材の受入れは、以前から政策として採りいれられたにも拘わらず、実効性が伴っていない。
 これを効力あるものにするために、外国人の家事労働者を受入れるという。
 思惑どおりにいけばいいが、最悪の場合、高度人材は入らず、家事労働者のみが増えることである。

5 は現状ただでさえ技能実習の名のもとに低賃金労働者の受入れではないかと疑われているが、あえてこれを拡大するという。

 中長期的な検討等として、 「移民政策と誤解されないように配慮し」 などという慎重な文言がある。
 衣の下から鎧が見える。