2016年10月17日月曜日

人工知能 7

 シンギュラリティが到来すれば AI が人類を滅ぼすなど AI 脅威論を説くアメリカのテスラモーターズのイーロン・マスクやマイクロソフトのビル・ゲイツは巨額の資金を AI に投資している。
 AI の脅威を煽りながら AI から巨大な利益を得ようとしている。このことになんら矛盾を感じていないようだ。
 また AI の軍事利用は現実的な脅威である。
 欧米の街には戦勝記念のモニュメンがいたるところにあり観光スポットになっている。日本では見かけない風景だ。AI の軍事利用が進められていることは想像に難くない。
 欧米諸国では経済的・軍事的な AI 利用の言行不一致は意に介さない素地があるのだろう。これも日本ではありえないことである。
 これらを踏まえてわが国の AI 対策を練らなければならないだろう。

 明治維新の担い手はそれまでの支配層ではなく下級武士であり、中心的役割を演じたのは薩長土肥の一握りの志士である。
 彼らは政治的にも軍事的にも危ない橋をわたりながらも欧米列強から国を守ろうという気概によって維新を成し遂げた。

 今わが国は少子高齢化と生産年齢人口の減少で経済は低迷しデフレに苦しみ相対的国力は衰退の一途を辿っている。
 現状はかろうじて過去の遺産でそれなりの国力を維持しているが、将来はこの国力を維持できるか否か保障の限りでない。
 激動の時代の現状維持は、後退を意味する。
 平和が長く続いたせいか現状維持・ほどほどの国力・ほどほどの経済であればいいなどの声も聞かれるが、そのようなスタンスでは現状維持など望めず後退あるのみだろう。
 AI 革命は生産性を指数関数的に引き上げる。少子高齢化はAI 革命を受け入れる絶好の環境である。
 このことを理解しないで外国人労働者受け入れ策を実行しようとしているがそれは AI 対策とは真逆の政策である。
 AI を開発するためにいま求められるのは数学とコンピュータの素養ある AI 技術者であるが、ような人材は極めて少ないため育てるほかないという
 こうなるとすぐわが国の当局は理科・情報教育重視を喧伝し、文科系の削減をいいだす。この近視眼的思考は官僚の抜け難い習性なのだろう。
 選択と集中は企業経営上は有力な武器であるが、こと人材育成のようなセンシティブな問題にはこの手法は必ずしも当て嵌まらない。
 いわゆるひも付き資金は研究者の自由な発想を妨げ目的達成への障害となりやすい。
  育てるにはそれなりの支援が必要であるが、その支援は研究者の自由な発想を拘束しない、いわゆるパトロン的支援が有効であろう。
 これに関連して武田邦彦氏はこう述べている。

 「もともと学問というのは、研究を始めるとき、それが将来の社会に『役に立つか、立たないか』は誰も判定できない。
 現在の社会は過去の学問で成り立っているのだから、『新しい世界を開く知』が未来の社会に役立つことを他人に説得することは論理的にはあり得ない。
 現在、日本では『役に立つ研究』にしか潤沢な研究資金が出ない。
 しかも、その審査はノーベル賞を取れないような社交的な東大教授を中心として行われている。
 その結果、日本の研究資金の配分は極端に東大に偏ってしまった。」(2016年10月16日 産経ニュース)

 東京大学の松尾准教授は、日本のトップ研究者を50人集めれば世界と戦えるといいそのための予算は150億あればいいと言い、PEZYグループの斉藤元章代表は超知能開発のため必要な100京コンピュータを開発するには最大500億あればいいと言うがその要求はみたされていない。
 国家の運命をも左右しかねないプロジェクトの一環としてはなんというつましい要求か。
 役に立つことがはっきりしない AI などに研究資金など出せないということなのだろうか。

 この点アメリカはどうか。アメリカはグーグル、フェイスブック、マイクロソフト、IBMなどの私企業がトータルで年間1兆円相当の資金を毎年 AI 開発に充当しているという。
 この資金面の格差はあまりにも大きい。この原因は AI に対する認識の差異からくるものであろう。
 政治家をはじめとした指導層の役割が望まれる。
 繰り返して言おう、明治維新は封建制度の因習が残る環境下で薩摩や長州など雄藩の志士たちによって成し遂げられた。 
 AI 革命もまた現代の志士によって成し遂げられることを期待したい。
 現代の志士は必ずしも AI 研究の中心にいる人から出るとは限らず、むしろ AI の専門外・素人から出るかもしれない。たとえば斉藤元章氏のような専門外の人から。
 すべての革命がそうであるように AI 革命もまた慣習や伝統に捉われていては成功はおぼつかない。
 AI 革命前夜、出でよ 狂瀾を既倒に廻らす平成の志士!

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