2014年11月17日月曜日

対米一辺倒

 北京で開催されたAPECでの日中首脳会談に先立つ写真撮影で、習近平国家主席の仏頂面が話題になった。
 メディアの解説によると、「反日世論の反発をおそれた政治的演技」という。
 そうと思わせるような習主席のぎこちない所作であった。

 「狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり。悪人の真似とて人を殺さば、悪人なり。驥を学ぶは驥の類ひ、舜を学ぶは舜の徒なり。偽りても賢を学ばんを、賢といふべし。」

 この徒然草の一節にある”真似”のところに、習近平主席の仏頂面というか不機嫌の”真似”を置き換えることができる。


 APEC関連ではつぎのニュースもながされた。
 「『初めて会ったときは他人でも、2回目からは友人になる』。
 安倍晋三首相は10日、北京で行った中国の習近平国家主席との初めての首脳会談後、アジア太平洋経済協力会議(APEC)ビジネス諮問委員会の会合で再び習主席と会話を交わした際、そう話しかけられたという。
 首相が11日のフジテレビ番組(10日収録)で明らかにした。」(2014.11.11産経ニュース)

 中国社会は「幇」に代表されるように特に人間関係が重要視される。
 このことは中国でビジネスに携わっている人がしばしば述懐している。
 はじめて会った人は他人かもしれないが、外交でそんなルールが通用する筈もない。
 たとえ政治的演技であろうと「仏頂面」されたら理由の如何を問わずされたほうは不愉快である。
 少なくとも習主席が韓国の朴大統領との初対面で「仏頂面」をしたという報道はない。

 一方米中首脳会談では、中国のアメリカに対する厚遇ぶりが際立った。
 中国は、日本を無視するかのような発言をした。

 「今回のアメリカの訪中は新しい形の大国関係を築くうえで重要な契機となる。」 
 「軍事交流を深め協力し、中国とアメリカの新しい形の軍事関係を発展させることで合意した。」 
 「太平洋は中米を入れるに充分な広さがある。」等々。
 これら中国側の発言はある程度想定されるとしても、アメリカ側の中国への姿勢がこれまで以上に、より中国重視に傾いた印象をうける。
 ケリー国務長官にいたっては、「我々のアジア重視政策の鍵となる要素が米中関係の強化にあることは疑いない」とまで言い切っている。
 米民主党は伝統的に中国寄り政策をとってきたが、オバマ政権になってその傾向は顕著である。
 オバマ大統領は、本年4月の訪日時に、
 「尖閣は安保適用の範囲内」であるとリップサービスしたが、
 今回訪中時には、
 「米中両国が効果的に協力できれば、世界全体の利益になる」 
 「米中関係を新たなレベルに高めたい」と、これまたリップサービスしている。
 共産党独裁国家がアジアのリーダーとなることを容認するとも受け取られかねないような発言だ。
 たとえ独裁国家であっても米国の国債や商品を買ってくれさえすればそれでよいという意図が透けて見える。

 国家の基本である国防を他国に依存するにも限度がある。
 はからずもAPECでの日中および米中首脳会談でそのことが窺い知れた。
 戦後70年、日本は、外交も経済も安全保障もアメリカとさえうまく連携すればそれでよかった。
 今回のAPECでアメリカは自国の利益に汲々とし世界のリーダとしての役割りに翳りがみえてきた。
 また他国へ干渉する余裕をなくしつつあるアメリカ自身が日本の全面的な米国依存を望んでいるとは限らない。
 それらのことにはおかまいなく、従来どおり、日本はアメリカへの対米一辺倒路線を踏襲するのだろうか。

 あからさまに日本を無視する中国、およびこれに明確に異を唱えないアメリカを見るにつけ、従来の対米一辺倒路線に疑念を禁じえない。

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