2014年11月3日月曜日

消費税再増税

 「他人の役に立とうとする日本人が増えている」 という調査結果が10月30日文科省所管の統計数理研究所から発表された。
 自分のことだけに気をくばっている 42% を3ポイント上回る45%であった。
 日本人の半数近くは他人の役に立ちたいと感じている。おそらく国際的にも稀であろうこの結果は日本人の国民性を表わしている。
 個人の場合はこのような結果であるが、集団の場合はどうであろうか。
 集団の統計なるものにお目にかかったことはないが、仮にあれば、集団の内と外を峻別する日本社会にあっては、個人とは異なることが予想される。
 集団内の組織の論理が外の論理より優先されるからである。
消費税増税にかかわる財務省の行動はその好例である。

 以前本稿でとりあげた財務省出身の野田自民党税制調査会長の発言を再び検証してみよう。


 「そもそも名目3%実質2%成長は、消費税増税の前提条件ではない。
 増税した分、そっくりそのまま歳出にまわすので、デフレにはならない。
 毎年1%増税など、机上の空論で経済活動の現場が混乱する。デフレ脱却とはいうけれど、要は、賃金が上がりさえすればいいこと。
 消費税増税すれば、企業にとって、賃金を上げるまたとないチャンスだ。われわれは、そのための手をすでに打っている。
 賃金を上げた企業には1割減税する。
消費税が3%上がれば、物価も3%上がる、従って賃金も当然3%上げなければならない。また、そのようにわれわれも指導する。」(2013/9/3 ニュース番組での内閣官房参与 本田悦朗氏との討論)

 野田氏は
消費税が3%上がれば、物価も3%上がる、従って賃金も当然3%上げなければならない。また、そのようにわれわれも指導する。」
と大見得を切ったがその結果賃金はどうなったか。
 26年4月からの対前年度比実質賃金指数は3%増どころか次のような惨憺たる結果となっている。

  26年1月 - 0.9 %
     2月 - 1.7 %
     3月 - 1.3 %
     4月 - 3.3 %
     5月 - 3.5 %
     6月 - 3.4 %
     7月 - 2.8 %
     8月 - 3.1 % 
(厚生労働省実質賃金指数確報値:事業所規模30人以上のきまって支給する給与)

 この指数などどこふく風、彼は、消費税再増税は実施すべしと次のように発言している。


 「自民党の野田毅税制調査会長は1日のBS11番組で、来年10月に予定される消費税率の10%への引き上げについて、『上げなかった場合のリスクは(上げた場合よりも)10倍以上大きい』と述べ、予定通り引き上げるべきだとの認識を示した。
 再引き上げの慎重論に対しては、『引き上げても経済成長に悪影響を及ぼさないような手立てを講じながらやっていくのが良識的な姿だ』と語った。」(2014.10.1 産経ニュース)


 大蔵省出身者らしい野田氏の発言である。

 「大蔵省は他官庁と比べて“大蔵一家”と呼ばれるように、その団結力には盤石の強さを発揮する。
 中でも大蔵省の中枢である主計局は、より強い連帯意識で結ばれた局であり、その団結力の秘密は、キャリアの主計官僚の多くが将来の幹部候補生ということもあるが、その彼らを支えるノンキャリア組の再就職先(天下り先)を、それこそ『死ぬまで』面倒を見てやるという“一家の掟”があるからだ。」(専修大学ホームページ大蔵省の支配構造から)

 財務省は、旧大蔵省時代からの団結の強さもさることながら省益を優先する伝統も受け継いでいて、その精神は現在も脈々と生きている。
 消費税増税は、たとえトータルで税収減になったとしても財務省の権限拡大に寄与し省益に適う。
 省益とあらば、増税実現を目指して組織的に活動する。
 有識者会議のメンバーの選定、御用学者の活用、マスコミ対策等々、現役OBともに総力をあげて増税推進に努力する。
 安倍首相は5%から8%への増税を決断する前に「増税しても全体の税収が減れば意味がない」というまともな発言をした。そして今回の再増税論にも同趣旨の発言をしている。
 実質賃金指数のみならず各種GDP統計は当初の26年7月からの急回復の見込みを裏切る結果となっている。
 もし、このデフレ下の日本で再び消費税が増税されれば、日本の将来に暗雲が漂う。
 そればかりか、かかることが繰り返されれば、日本は最悪の場合、アルゼンチンと同じく先進国から脱落しかねない。
 そうならないためにも、どこかで事態を正しく受け止め目覚めなければならないが、消費税再増税の阻止はその試金石の一つとなろう。

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