2019年8月5日月曜日

衰退する日本 5

 つぎに問われるのが構造改革である。
 安倍内閣は小泉内閣の手法を踏襲し政策の基本方針を骨太の方針(経済財政改革の基本方針)として決定している。
 小泉内閣は骨太の方針で聖域なき構造改革を掲げ推進したが安倍内閣はこれを一段と過激に徹底推進している。
 安倍首相は構造改革・規制緩和こそ経済成長の要であると信じているようだ。至るところで自ら率先して岩盤規制にドリルで風穴を開けると宣言している。
 この政策を歓迎するのは政、官、財、マスコミおよびグローバル投資家など「力」ある少数の人たちである。
 多くの国民にとって利益はなくむしろ有害なものが多い。20年以上にわたるGDP低迷と実質所得減少がその歴然たる証左である。

 国家的プロジェクトのすべての出発点は安倍首相の「国益のため」という信念で推進されている。
 結果こそ思惑通りではなかったが彼の「国益のため」という信念に偽りはないだろう。
 問題は安倍首相のこの信念を利用して自らの利益のみを追求する人たちがいることである。
 彼らは骨太の方針を御旗にあらゆる手段で規制をつぎつぎに撤廃し利益誘導を図っている。
 その代表格は竹中平蔵氏であろう。彼は一貫して政府の骨太の方針にかかわってきた。小泉内閣では経済財政政策担当大臣などの要職で安倍内閣では内閣諮問会議の民間議員として。
 この人物の特異なところは学者、政治家、実業家などといろんな顔をもっているが行動の基点は「私益」という一点に絞られていることである。
 このことは竹中氏自らあるいは彼の息のかかった人物が当局あるいは民間議員としてかかわる構造・規制改革の成果から必ず利益を得ていることがその証である。「私益」の追求は彼の哲学なのだろう。
 実行に移されあるいは移されつつあるものに労働分野の規制改革、外国人労働者の受け入れ規制の緩和、所有権は公共に残したまま運営だけを民間が受け持つコンセッション方式として空港、道路、水道、下水道などがある。
 小泉内閣から安倍内閣になっても政策策定に強い影響力を持ち利益誘導を図る竹中氏の振舞いは皇帝を操り秦帝国を私物化した宦官(かんがん)・趙高のようだ。

 公のためと称して個人の私腹を肥やすなどもってのほかだが残念ながらよくあることである。
 問題とすべきはそれが私腹を肥やすだけに止まらないことである。
 過激な構造・規制改革は国の基盤を破壊する行為である。社会の構造は長い時間をかけて形成されてきたものである。これを急激に変える行為はそれは改革ではなく破壊である。 
 かって日本語を廃止しフランス語にしてはどうかという提案があったがこれを言語改革などとは言わないだろう。 昨今の構造改革は改革というより破壊に近い。
 結果として社会の活力のもとである分厚い中間層が消え一部の富裕層と多数の貧困層だけになった。
 構造改革の名で実施された一連の破壊活動がわが国を衰退させたことに疑いの余地はない。不幸なことにそれがいまなおつづいている。

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