2018年6月18日月曜日

AI時代の格差問題 2

 2154年地球は人口爆発により生活環境が悪化した。超富裕層は地球を脱出し衛星軌道上に建造した人工居住地「エリジウム」に移住した。
 このようなストーリーのSF映画「エリジウム」は格差問題がテーマとなっている。
 たとえば難病の白血病も「エルジウム」では簡単に治せる。だがそれを享受できるのは「エルジウム」の市民権を持つ人だけ。しかし「エルジウム」市民権は固く閉ざされている。
 AIが進化すればこのSF映画も夢物語ではなくなるかもしれない。バラ色の夢ではなく悪夢として。

 AIが進化すればなぜこのような格差が生まれるのか。原因は究極の技術革新にある。
 技術革新は人類の歴史と共に進化してきた。蒸気機関、オートメーション、コンピュータそしていまIOT(Internet of Things)が現在進行形である。
 格差の原因は技術革新によってもたらされる雇用にある。
過去新しい技術が発明されるたびに失業した労働者たちが機械を打ち壊すラッダイト運動が発生した。
 だが機械を打ち壊したその失業者たちもやがて技術革新によって生まれた新しい仕事につくことができた。
 現在までの技術革新の歴史はこの繰り返しであった。ところが現在のIOT時代の先にある本格的なAI時代が到来すれば様相は一変するであろう。
 本格的なAI時代とは汎用AI時代である。将棋、囲碁、翻訳などある分野に特化したAIは既に開発されたものもあり今後もますます進むであろう。
 この特化型AIは従来の技術革新の延長線上にある。問題となるのは汎用AIである。汎用AIの開発が完了すればそれは次元の異なる技術革新となる。
 汎用AIは人と同等またはこれを超える能力を持ちかつ汎用AIが汎用AIを造るという増殖能力を持つ。
 こういう汎用AIを人がコントロールできるか否かは研究者によって見解が分かれる。だが雇用面から見れば人と同等以上の仕事をする汎用AIが殆んどの人の仕事を奪うであろうことは確かである。
 汎用AIに仕事を奪われた人はこの技術革新によって新しい仕事ができたとしても増殖された汎用AIがこれを担うため仕事がなくなる。この意味において汎用AIは従来と次元が異なる技術革新である。

 そうなればどのような社会となるか。殆んどの人は失業する。汎用AIが生産の殆んどを担うからである。
 ところで生産は消費する人がいなければ意味がない。しかし失業者は消費するために必要な所得がない。所得がないからこれを政府が給付するほかない。これは正義とか公正以前にAI時代の経済を回転させるために必要な制度である。AI時代のベーシックインカムの発想の原点がここにある。
 これで万事うまくいくかというとそうではないから厄介である。汎用AIで生産する資本家とベーシックインカムの給付をうける消費者の関係である。
 ここには想像を絶する格差が生じる。 資本家は汎用AI投資がもたらすその厖大な資力をもとに政治力を発揮し理想の生活を追求することができるであろうが政府から給付を受けるだけの消費者は生産物を消費するだけの資力しかなく政治力など発揮しようがない。まさに「エリジウム」の世界である。来るべきAI時代の悲観的なストーリーの一つである。

0 件のコメント:

コメントを投稿