2015年8月10日月曜日

突出するドイツ 4

 『ドイツでの定点観測を始めてから、25年目になる』 という熊谷徹氏は、一言でいえば『ドイツかぶれ』といっても言い過ぎではないほどドイツに肩入れし、日本については否定的だ。
 『ドイツかぶれ』が言いすぎであれば、母国 日本に対する自虐思想の反動といってもいい。
 優秀なジャーナリストであるにもかかわらず自虐史観教育の罠に嵌ったとしかいいようのないほどの思想にとり憑かれている。わが国の戦後教育の体現者ともいえる。
 戦争責任についていえば、日本とドイツは根本的に異なる。
 日本の無責任体制は第二次大戦に限らず、もともと日本人の行動様式である。
 日本は、その場の空気によってことが決まる。これは、わが国の多くの社会学者が指摘するところであるが、戦前戦後を問わず、また人が介在することがらのすべてについて言える。
 ここのところの理解がなければ判断を誤りいつまでも誤解が解けない。
 彼はドイツ語をマスターし、ドイツについて必死に理解に励んだが、日本についてはどうか。
 彼は戦後の学校教育で受けた印象をそのまま引きずりそこに止まっているのではないか。
 彼はまた語学の重要性を強調するあまり、中小企業者にもジャーナリスト並の語学をマスターしなければ成功は覚束ないという。
 戦後のどさくさで、自信をなくした日本人が、いっそのこと日本語をやめて英語を母国語にしたらどういかといった話を想起させる。
 彼の個人的体験は感情移入が激しくおよそ科学的調査手法とはかけ離れたものとなっている。

 ドイツ人と結婚し3人の子供を育てた川口マーン恵美氏は、33年にもわたるドイツ生活を通じ、ドイツに対し冷静な観察眼を失っていない。
 彼女は、ドイツの歴史に精通し、的確にドイツの現状をレポートしている。
 戦時賠償については、ユダヤ人に対する『人道に対する罪』でイスラエルに慰謝料を支払ったが、その他の国にたいしては、何も支払っていないという。 
 たとえば、ギリシャのチプラス首相はドイツに対し戦後70年も経過した今頃、戦時の強制調達の補償を要求したほどだ。
 彼女はまたドイツの外国人労働者に頼った経済成長戦略、およびフランスやロシアなどドイツの近隣諸国の原子力やガスに頼った脱原発エネルギー政策は、必ずしも順風満帆ではなく、むしろジレンマに陥っているのが実態であると指摘している。
 これに関連して最近ヨーロッパで最大の関心事である移民問題についてもいち早く懸念を表明している。
 個人の体験は科学的な調査まで昇華しているか否か、科学的訓練を受けているか否かが重要であり信憑性はそれにかかっている。
 川口氏のレポートはドイツの歴史に精通した知識と日々のドイツでの生活に裏打ちされたものであろう。科学的調査方法の訓練をうけている人のそれを想起させる。

 次に残った問題は、ドイツがなぜ南欧諸国に緊縮財政を強いるのかである。
 この問題については熊谷、川口両氏とも詳しく触れていない。
 稿を改め考えてみたい。

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