2013年9月16日月曜日

消費税増税 再

 消費税増税については、10月1日に安倍首相が決断するという。
 報道でみるかぎり、来年4月から3%アップし8%になることは既定事実化されつつある。
 政界、官界、財界、マスコミ、学界その他、”一般国民を除いた”すべてがこの空気に呪縛されているとの印象をうける。
 「あのときの流れから他の選択肢はなかった」
 「それに逆らえるような雰囲気ではなかった」
 「ことここに至っては賛成せざるを得なかった」 
 これらの言葉は、近代日本が、決定的な分岐点で決断をせまられたとき、幾度となく聞かされてきた。
 何人たりとも、この空気に抗うことはできなかった。時の為政者でさえ例外ではなかった。
 いま争点となっている消費税増税が正しい施策であればともかく、そうでなければ、この空気に水をさすのが、日本の利益に叶う。この観点から改めて見直してみたい。
 去る9月3日ニュース番組で、興味ある討論が行われた。自民党税制調査会長 野田毅氏と内閣官房参与 本田悦朗氏の討論である。

 本田内閣官房参与は、
 「税収減の主原因はデフレであり、このデフレ脱却を阻害する要因はできるだけ避けなければならない。名目3%実質2%成長を実現するのが目標だが、肝心なことは現在の状況は需要不足からきているデフレだ。
 これを是正するには、賃金が上がり需要を喚起するデマンド・プル・インフレを実現すべきだ。名目GDPが成長すれば、税収弾性値も期待できる。
 仮に名目3%成長すれば、弾性値が2.5位は見込めるので、税収は7.5%UP期待できる。消費税増税により物価は上がるが、これはコスト・プッシュ・インフレだ。コスト・プッシュ・インフレはデマンド・プル・インフレを阻害する。
 結果的にデフレから脱却できない。国民は絆を大切にしている。消費税増税は已む無しとも思っている。
 ただ、一気に3%は過激すぎる。諸外国でもあまり例がない。導入すれば反動が大きすぎる。しかも3%につぎ翌年2%と2回にもわたる。ここはマイルドなインフレ期待を醸成する毎年1%増税が妥当と考える。」

 デフレとデフレ脱却についての本田内閣官房参与の認識は、経済学的にも、実務的にも背理とは思えない。

 これに対し野田自民党税調会長は、驚くような発言を連発した。
「そもそも名目3%実質2%成長は、消費税増税の前提条件ではない。
 増税した分、そっくりそのまま歳出にまわすので、デフレにはならない。
 毎年1%増税など、机上の空論で経済活動の現場が混乱する。デフレ脱却とはいうけれど、要は、賃金が上がりさえすればいいこと。
 消費税増税すれば、企業にとって、賃金を上げるまたとないチャンスだ。われわれは、そのための手をすでに打っている。
 賃金を上げた企業には1割減税する。
消費税が3%上がれば、物価も3%上がる、従って賃金も当然3%上げなければならない。また、そのようにわれわれも指導する。
 名目GDPが上がれば、税収弾性値により税収が上がるというが、そんなことは断じてない。
 繰越欠損金が約80兆円あり、これが補填後の利益は少ない。ために景気がよくなっても税収増をそれほど期待できない
 税収減の原因はデフレというがそれは間違っている。
税収減の主因は社会保障給付費の増大である。社会保障給付費をまかなうためにも、消費税増税は不可欠だ。
 そもそも日本の税率は、欧州諸国に比し低すぎる。
予定通り実施しなければ、マーケットが混乱し、国家や首相の信認も揺らぐ」

 税率3%上げたら、企業に賃金を3%上げさせる。
中国の李克強首相も、これを聞いたらビックリ仰天するのではないか。
 日本はいつから計画経済国家になったのか、と。
ナヌ、繰越欠損があるから税収増は見込めない。
日本中の会社が繰越欠損をかかえているように聞こえる。
 繰越欠損の横綱であったメガバンクなど、殆ど終了している。
百歩譲って、繰越欠損を早期に補填してこそ税収増の展望が開けないのでは。
 予定通り実施しなければ首相の信認が揺らぐ。
これは脅しに近い。
 欧州諸国の付加価値税率は高い。
政府と民間の福祉を負担する割合が、日本と欧州諸国では違う。
税収減の原因はデフレではない。
もはやコメントの要ナシ。

 自民党税調会長には、かって税調のドンといわれた山中貞則がいた。
 彼は、税制のことに関しては、政府や中曽根首相の関与を一切認めない態度を貫いた。
 曰く 
 「政府税調は軽視はしない、無視するだけだ」
「首相に口をはさむ能力などない、まだ懲りないのか、このおしゃべり野郎」
 野田氏は当時、税調の中堅議員として、山中会長を弁護した。
税制など議論したらきりがない、税制のプロに任せるにしくはない、と。
 そして、いま自ら、自民党税調会長となって、山中路線をひた走っている。税制はプロである俺たちに任せろ。素人はそこのけ。
 税制は民主主義国家の基本である。
官僚と自民党税調は、こと税制に関して、「よらしむべし知らしむべからず」 
 それが証左に、国民の7~8割が消費税増税を予定どおり上げることに反対しているにもかかわらず、これを押し通そうとしている。
 税制とは何か、民主主義とはなにか。消費税増税論戦は、はからずも、それを考えるきっかけを与えてくれた。

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