2016年9月12日月曜日

人工知能 3

 AI が活用される分野は、画像認識、音声認識、ビッグ・データ、自動運転、創薬、文字認識、自然言語、セキュリティ、ロボットなどがある。
 その成果は日常生活、仕事、産業の広範囲に及ぶ。
AI でもアメリカは一歩先んじている。グーグル、フェイスブック、アップル、マイクロソフト、アマゾン、IBMなどその豊富な資金力で目ぼしい国内外のAI ベンチャーを買収して AI の技術開発で先行している。
 この顔ぶれには製造業はなく IT 企業のみである。
IT 企業がAI の技術開発に力を入れるのはそこに巨大なビジネスチャンスを見出しているからであろう。
 日本はどうか。日本はトヨタ、ホンダ、日立、パナソニックなど主に製造業がベンチャー企業と提携して AI の技術開発に取り組んでいる。

 日本における AI の熱心な推進者である東京大学の松尾豊准教授は、一口に AI というが、これは二つに分けて考えた方がいいという。
 情報路線(大人の人工知能)と、運動路線(子どもの人工知能)である。
 そしてこの二つの路線は AI 産業競技のいわば予選リーグで、予選リーグを勝ち進んだ企業が決勝に進み、最終的には高度に知能・機械がモジュール化し組み込まれた社会において、人工知能が組み込まれた日常生活ロボット・機械を担う企業が勝者となるという。
 日本が目指すべきは運動路線である子どもの人工知能をターゲットにすべきであると主張している。

 「以前にもお話ししましたが、僕は人工知能を 『大人の人工知能』 と 『子どもの人工知能』 に区別しています。
 これまで、コンピュータにやらせるのは子どものできることほど難しいという時期が何十年も続いてきたのですが、今は変わりつつあります。
 子どもができるような認識や運動の習熟、言葉の意味理解などができるようになりつつあるということで、こちらを 『子どもの人工知能』 と呼んでいます。
 一方でビッグデータ全般や IoT に代表されるように、今までデータが取れなかった領域でデータが取れるようになってきました。 
 ここに旧来からある人工知能の技術を使うと、いろいろなことができます。
 こちらを 『大人の人工知能』 といっています。
 今の動きの中で、僕が一つ非常に気を付けるべきだと思っているのは、 『人工知能』 という言葉が独り歩きしていて、いろいろな技術を人工知能と呼んでいる点です。
 大人の人工知能の世界は 『データを活用していきましょう』 ということなので、これは当たり前のことです。
 昔からデータの重要性はありましたし、活用した方がもちろん良かったのです。
 これはもう10年も20年も前からそうです。日本はそこのところの理解がなかなか進んでおらず、むしろ遅れているので、今頃になってようやく 『データを活用した方がいい』 『情報技術を活用した方がいい』 と多くの人が思うようになってきたということです。
 ですから、これは当然やった方がいいのですが、既に10~20年も遅れをとっています。
 一方で子どもの人工知能、すなわちディープラーニングをベースにする技術は、技術的なブレークスルーの時期に当たり、ここ2~3年で、急激にできるようになってきたのです。
 これをどのように産業競争力につなげていくか。そこに日本の戦略的なチャンスがあると思います。
 ですから、この二つは分けて考えた方がいいと、僕は思っています。
 プレイヤーについても、大人の人工知能をやろうとしている人の方が今は多いのです。
 大手の電機メーカーもそうだし、研究者にも大人の人工知能系、つまり情報(データ)を使おうとか、先端の情報技術を使おうという技術を研究している人が多いのです。
 ですから、今はこちら(大人の人工知能)の方が声が大きく、『国レベルで 人工知能をやりましょう』 といったときに、大半が 『大人の人工知能』 系の話になってしまうのです。
 ここ(大人の人工知能)も大事ですが、今あえて投資する必要があるかといえば、それほどありません。
 今、日本が戦略的に投資するべきは 『子どもの人工知能』 で、その技術的なブレークスルーに賭けるべきだと、僕は思っています。
 ただ、こちら(子どもの人工知能)はプレイヤーが少ないので、なかなか苦しいのです。
 しかし、グローバルな産業競争力につながるのはきっと 『子どもの人工知能』 の方に違いないと、僕は思っています。
(10MTV 日本のAI戦略)

 なぜ日本は、情報技術・データの活用が10~20年も遅れをとったのだろうか。 
 今年7月松尾准教授はフォーリン・プレスセンターの講演で情報路線はあきらめ運動路線にターゲットを絞るべきと述べた。
 なぜそうなのか理由を質問した記者にこう答えている。

 ”日本には1990年代既に検索エンジンがあり、2000年代に入ってすぐソーシャルネットワークもあった。
 だがユーザが日本人に限られるため大きくならなかった。
10倍人通りが多いところで店を開くのと10倍少ないところで店を開く違いである。
 日本語でやっている限り大きくならない。情報路線にはこの制約があるが運動路線にはこれがない。”

 別の講演では運動路線に特化すべき理由を列挙している。

① 少子高齢化でかつ幸いにも移民を受け入れていないため、AI を活用した機械化・ロボット化の効用が大きい。

② 人工知能研究者数に恵まれている。2015年現在人工知能学界 日本人は 3500人、 日本以外では全世界でも 6000人である。

③ 日本は第1~2次ブームからの研究者を擁していて、指導者層にAI にたいする理解がある。インターネットのときにはなかったことである。

④ インターネットのときにはニーズを見つけるというビジネスセンスが求められたが、今回は防犯は防犯、建設は建設とニーズは変わらず性能向上の要求であり、製造業にも求められる賢さと真面目さが重要となり日本人向きである。

⑤ インターネットは日本語が障壁となり早くから検索エンジン、ソーシャルネットワークがありながら日本からグーグルもフェイスブックも生まれなかった。
 AI は言葉は関係がない。アルゴリズムを製品にのせるから日本語のハンデがない。

 このように松尾准教授は日本は運動路線に特化すべきと力説している。

 AI は今アメリカが先行しているが この技術は2012年にブレークスルーしたばかりである。真の競争は今後にかかっている。

 わが国における AI の今後の展望に先立ちシンギュラリティについて考えてみたい。
 AI が全人類の知能を越えるときがくればどのようなことになるのか。その日は2045年ともいわれている。

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