2014年1月6日月曜日

21世紀のカルタゴ 1

 新年を機に改めて日本の立ち位置を考えて見よう。
日米構造協議、年次改革要望書、日米経済調和対話と形は変われどほぼ一方的なアメリカの対日要求とその受入れ、イラク戦争への130億ドルもの巨額出費、米国債の買入れ、おもいやり予算、多くの反対にもかかわらずアメリカの意向を優先したTPP参加。
 中国と韓国から歴史認識と称するあからさまな内政干渉。
メドベーチェフ前ロシア大統領による北方領土、李明博前韓国大統領による竹島への公然たる上陸。北朝鮮による日本人拉致。
 冷静に考えれば考えるほど、国家として忍耐の限界にきている。
 日本の現状をあえて歴史に照らせば、紀元前2世紀の第二次ポエニ戦争敗北後のカルタゴのイメージに重なる。
  わが国の歴代政権は平和を呼びかけ常に対話の窓口を開け、腫れ物に触るかのごとく周辺国と接してきた。にもかかわらず事態は一向に改善しないどころか、悪化の一途を辿っているようにみえる。現政権は高姿勢だからいけない、もっと低姿勢で周辺国に接しろという意見も目立ちかけた。隣国の空気を読む日本人らしい見解だ。民主党政権時代の低姿勢外交に戻れとでもいうのだろうか。
 日本は戦後一貫して平和をもとめ極力争いを避けてきた。防衛予算もGDPの1%以下という低水準に抑えてきた。戦後変わったことは経済が発展し一時世界第二位にまでなったことである。
にも拘わらず、軍国主義復活だ!などと叫ばれるのはなぜなのか。日本人の自信の無さを見透かされているのかもしれない。
 例えば、尖閣諸島の問題。
中国船が平然と領海侵犯を繰り返すたびに、日本政府はアメリカ政府に、尖閣諸島は日米安保の対象領域であることを確認し、米政府はこれを中国政府にメッセージとして伝えてきた。中国政府の一方的な領空識別権設定にも同じく対処してきた。アメリカ政府が、これに答えてくれると日本は、政府も国民も一様に安堵する。
 自主防衛できない日本を見透かして威嚇し、内政干渉をする。中韓とも歴史的にも事大主義の国であるから、その後の展開はアメリカの出方次第である。
 アメリカが昨年末の安倍首相の靖国神社参拝で中韓寄りの発言すれば、中韓両国は勢いづき嵩にかかって日本を非難し、日本政府、国民ともおろおろするばかりである。自主防衛できない国のかなしい現実がここにある。
 根本原因は、軍事力を伴わない政治力の弱さにある。軍事力は、通常兵器の多寡、優劣ではなく、今や核戦力の有無に左右される度合いが増した。近隣諸国では韓国を除きすべて核保有国である。
 日本をとりまくこの閉塞した状況を打開するには、軍事力の議論は欠かせない。軍事力の議論は核戦力の議論抜きには考えられない。唯一の被爆国たるわが国は率先して核全廃を主張するだけでなくその実行を担保するところまでいかなければ意味が無い。このために、もしそれがかなわなければわが国自身が核保有も辞さずの決意が求められるかもしれない。またそこまでいかないと核全廃の主張などに耳を傾ける核保有国はないであろう。
わが国ほど核全廃を目指す議論の主導権をとるにふさわしい国はない。
 唯一の被爆国たるわが国には、核に対するアレルギーがあり、長らく議論すること自体タブーであった。が、国家の浮沈が問われるとあらば、一切のタブーは捨て去られるべきである。自らの運命を決めることができない国家が如何なる道を辿るか。

 古今東西の文明の盛衰を跋渉したイギリスの歴史家トインビーはいう。

 「被指導者の指導者からの離反は、社会の全体のアンサンブルを構成する部分相互の間の調和の喪失とみなしてよい。部分からなり立っている全体においては常に、部分相互間の調和が失われれば、その代償として、全体が自己決定の能力を失う。
 この自己決定の能力の喪失こそ、衰退の究極の基準である。そして、この結論は、さきにこの『研究』において到達した、自己決定の能力の増大が成長の基準である、という結論の裏返しであることがわかれば、驚くに当らない。」
(A・Jトインビ-『歴史の研究』長谷川松冶訳)

 これに関連し、トインビーはシェイクスピアの『ジョン王』を引用している
このイギリス国はこれまで、傲慢な征服者の足もとに
ひれ伏したことがなかったし、また、将来もないであろう。
まず最初にみずからを傷つける手助けをしないかぎりは、
・・・なにものもわれわれを後悔させることはできない、
イギリスがみずからに忠実であるかぎりは。(前掲書)

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