2013年11月4日月曜日

経済格差 2

 我が国は、よきにつけ悪しきにつけ、戦後一貫して同盟国アメリカの影響を受けてきた。
 近くは、小泉政権時代の、小泉・竹中路線は、影響を受けたというよりは、こちらからアメリカにすり寄っていったというべきかもしれない。
 小泉政権時代のアメリカ寄りの流れは国民の間に浸透し、安倍政権になっても目立った変化はないようにみえる。
 今後、この大きな流れに沿っていくかどうか、次の二つが我が国の進路を占ううえでの判断材料となろう。
 対外的交渉事項としての TPP と安倍政権の第三の矢 成長戦略である。
 この二つの成行き如何によって我が国の経済格差の拡大/縮小の方向性がある程度見えてくる。

 まずTPP

 TPPは、各国がおかれた現状より、競争原理を働かせるシステムであるから、経済格差を拡大させる方向に力が働く。
 TPPは国家の枠組みを超えた競争でもあるので、国内のみでの競争とは異なりより一層厳しいものとなる。
 経済格差の視点からのみTPPを捉えると離脱が最善の策であることは間違いない。
 が、そうすることができなければ各国との交渉でできるだけ有利な結果を勝ち取る他ない。
 現状はどうか。
内閣官房TPP政府対策本部のTPPバリ会合結果報告(H25年10月21日)を見てみよう。

 首席交渉官会合、閣僚会合の結果概要

○ 首席交渉官会合、閣僚会合において、物品市場アクセス、サービス、投資、電子商取引、知的財産、国有企業、環境など交渉分野全般にわたって議論を行い、残された論点、今後のステッ等について整理。


○ 日本は、閣僚会合の場で、交渉が難航している知的財産について、政治的に解決しなければならない課題を整理するなど、いくつかの論点について交渉の前進へ向け、積極的な貢献を果たした。 

 秘密交渉を運命付けられているTPPらしく具体的交渉経過などなにも分からない。
 国民はただ結果を突きつけられるのを待っている他ないようかのようだ。

 つぎに成長戦略

 安倍首相は、規制改革を成長戦略の「一丁目一番地」と位置づけ、雇用、エネルギー・環境、健康・医療の3つを重点分野とする方針を表明した。
 この「一丁目一番地」なる表現はもともと竹中平蔵産業競争力会議議員が言い出したもの。
 成長戦略の現状はどうか。
 2013年10月1日開催された第14回産業競争力会議議事要旨をみると民間議員の竹中平蔵議員と三木谷浩史議員の発言が目をひく。
 竹中議員は欠席したため、かわりにレポートを提出した。そのレポートは主として「雇用」について述べられており、「雇用」の規制改革が全く進んでいないことを嘆いている。
 竹中議員は驚くなかれ人材派遣会社パソナの会長である。自らの業界の利益誘導ととられてもいたし方あるまい。
 三木谷浩史議員は、一般用医薬品のインターネット販売が全面解禁になった筈だが、一般用医薬品へのスイッチ直後の28品目については、ネット販売を禁止しようとする動きがあると不満を表明している。三木谷議員は楽天社長である。
 彼の主張は徹底しており、一般用医薬品のインターネット全面解禁という自らの主張が受け入れられなければ民間議員を辞する旨政府にせまっているという。

 竹中、三木谷両議員の言動は、アメリカ社会ではあたりまえかもしれないが、日本では少数派に属するだろう。
 少なくとも従来の日本人の行動様式には馴染まない。
自らの利益を全面に押し出して恥じることを知らない。否、むしろそのことを誇りにさえ思っているふしがある。
 かって吉田松陰は叔父である玉木文乃進から教育を受けた。 玉木の指導は厳しく、書物の朗読中松蔭の顔にハエがとまったため痒くなり顔を掻いたら平手打ちされた。
 些細なことかもしれないが、顔を掻くのは「私」であり、私事を優先するような人物に大きな仕事は出来ないと諭したという逸話がある。
 これは極端かもしれないが、少なくとも日本人は公私を区別せよと教えられてきた。

 有力なこの両民間議員の言動を紹介したが、彼らの動向が産業競争力会議、ひいては安倍政権の第三の矢 成長戦略に大きな影響を及ぼしかねないからである。
 小さな政府で自由競争を標榜する新自由主義経済理論はアメリカの野党共和党の政策である。
 この両議員が米国共和党の政策を信奉しているか否か定かではないが、彼らの言動はそれに近いものを思わせる。
 安倍政権の成長戦略により、我が国の経済格差はどうやら今よりさらに拡大する方向に向かうように見える。

 経済格差が進むと何が問題なのか、社会にどのような影響を及ぼすのだろうか次稿で考えてみたい。

0 件のコメント:

コメントを投稿