2013年7月8日月曜日

中国の影の銀行

 中国で影の銀行(シャドーバンキング)が俄にクローズアップされてきた。
 影の銀行とは、金融当局の監視外にある投資銀行やヘッジファンドなどであるが、これが地縁・血縁社会の中国では地方の有力者などがスポンサーとなって作った銀行であり、中央銀行の管理外にある、いはば闇の銀行である。
 闇の銀行は、理財商品と呼ばれる高利回りの財テク商品を売り捌き、この商品が不良債権化しおきまりの金融危機コースを辿らんとしている。
 日本のバブル経済のころ、これに似たシステムがあった。銀行に当局から規制がかかると、銀行は系列のノンバンクを利用した。銀行は、ハイリスク・ハイリターンの商品は、検査・監督の対象とならないノンバンクにまわした。商品が回転しなくなって、結果金融危機をおこした。
 最近の事例では、米国のサブプライム商品がある。米国中央銀行であるFRBの監督外にあり、影の銀行である投資銀行とヘッジファンドが売り捌いたサブプライム商品が不良債権化し、表の銀行業務まで破壊したことは記憶に新しい。
 日本の場合、金融危機から立ち直るのに長い年月を要した。塗炭の苦しみを味わい20年以上にも亘る酷いデフレになった。
 アメリカの場合は、日本の先例を見てか否か、対応が比較的早く回復した。
 が、アメリカの場合は影響が大きく、主要な国を道連れにし一時深刻な金融危機に巻き込んだ。
 金融制度が整っている日本やアメリカでさえ、このような金融危機を起こした。
 昇竜の勢いで経済発展し、これに伴う諸制度が未整備の中国で金融危機が起きないと思うほうが不自然だ。
 少しでも中国経済に関心があれば、最近の中国の影の銀行問題は、ついに来るものがきたと思うに違いない。
 重要なことは、この中国版 影の銀行システムの行方だ。
 まず、日本への影響。この問題がクローズアップされてから、6月20日、中国の銀行間取引基準金利SHIBORが、翌日物で13.4%になり、病み上がりからやっと回復基調にある日本の株式市場は、まるで地雷を踏んだかのような騒ぎとなった。が、当日と翌日一瞬株式市場は暴落したがすぐに平静を取り戻した。アメリカ、欧州には日本ほどの影響はなかった。このことは、中国の経済が世界に与える影響は大きいものの、金融が世界にあたえる影響は、経済とは異なることを図らずも証明した。
 が、現実に中国で金融危機が発生すれば、それはそれで大変なことになる。
 特に、日本にとってかなりの打撃となるのは間違いない。
影の銀行システムの破綻は、なによりもまず、中国政府にとっては、大きな痛手となるだろう。
 闇金融の業務は、党や政府に直接の責任はないものの、この業務は深く庶民の暮らしと直結しているからだ。
 これが破綻したら、庶民の怒りは、党や政府に向かうだろう。そうなれば、庶民の生活に直結するだけに、その怒りは、日本に対する歴史問題や尖閣問題の比ではない。
 日本に対する中国の若者の怒りは、もともと官製で醸成され洗脳されたものであり、体験からきたものではない。
 この怒りに比べれば、金融危機がもたらしかねない生活破綻の怒りは推して知るべし。
 闇金融破綻は、庶民にとって死活問題で、暴動が発生したら、これを止めるのも容易ではないだろう。
 中国の国防費は近隣諸国と比し多いといはれているが、どういたしまして、2013年度予算で治安維持費は国防費より3.8%も多い約12.7兆円である。
 治安維持費が国防費より多いお国柄で、これ以上庶民の怒りをかうのだけはやめなければならない。
 中国共産党の七賢人はそう思いあらゆる手立てを打つに違いない。
 闇金融を当局の管理に移し、不良債権処理のソフトランディング決着を目指すのか、あるいは、独裁政権らしく荒療治で一気にハードランディング処理するのか、中国政府の対応に注視しこれから目を離せない。
 中国状勢は、統計資料だけに頼っては判断を誤る。
 発表される中国の統計資料の信頼性には疑問なしとはしないからである。
 むしろ、中国各地で発生する暴動のニュースや不動産市場を注視したほうが、より中国を理解できるかもしれない。

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