2013年4月29日月曜日

道州制考 1

 自民、公明両党が道州制基本法案を今国会に提出する構えをみせている。都道府県を廃し、10程度の道や州に再編すると言う内容で、与野党の殆どが賛成している。
 内閣官房の道州制ビジョン懇談会の中間報告とりまとめ資料で道州制を導入することのメリットとして次の点があげられている。

① 政治や行政が身近なものになることで受益と負担の関係が明確化し、効率の低い政治行
政の要求が抑制される。
② 政策の意思決定過程の透明化が進み、住民参加が容易になる、
③ 東京一極集中が是正され、多様性のある国土と生活が構築される、
④ 地域の実情や特性を踏まえた迅速で効果的な政策展開が可能となる、
⑤ 国の縦割り機構による重複行政がなくなり、補助制度による無駄遣いや陳情合戦の非効率が改革される、
⑥ 十分な規模と権限を持った道州による地域経営がなされることで、広域の経済文化圏が確立される、
⑦ 国の役割を国家本来の機能に集中させることで、国家戦略や危機管理に強
い中央政府が確立される、といったメリットがある。

 その一方で、以下の懸念や課題も指摘されている。

① 国の「上からの調整機能」が失われるために、地域間の格差がかえって拡大する。
② 道州に十分な人材や能力が伴わず、国の関与が続く結果となる。
③ 規模が大きくなることで住民との距離が広がり、住民自治が形骸化してしまう。
④ 道州間の企業や富裕層誘致の競争が激化し、生活者の目線から遊離してしまう。
⑤ 都道府県単位で育った業界や文化の団体が困る。
⑥ 都道府県単位で代表を出している行事等ができなくなる。

 しかし、これらの課題は道州制の制度設計を適切に行うことで乗り越えることが可能である。
 さらに、道州が実際に施策を展開する際に、こうした課題に対して十分に配慮することで、課題が克服され、むしろ大きな成果を挙げることができるものと考えられる。
 ただし、地域主権型道州制のもとにおいては、地域経営における自己責任が重くなるのは確実である。それに向けた、首長、議員、公務員はもとより住民の覚悟が求められる。
(内閣官房 H20年3月24日道州制ビジョン懇談会中間報告から)

 なお、同懇談会の中間報告で、現状の問題点として中央集権体制を槍玉にあげている。

 「日本経済が一定レベルに達する一方、人類の文明がそれぞれの満足を求めるものとなり、国境が稀薄となるグローバル化が進展している現在、日本の中央集権体制は有効性を失い、国民生活のさまざまな側面において数多くの弊害を発生させている。 国際社会におけるわが国は、多くの分野で一時の勢いをなくし、最も得意とする経済ですら、「もはや一流の国とはいえない」状態に陥っている。
 いま日本が行なわなければならないのは、明治以来の「古い国のかたち」である中央集権体制を解体し、今日に適応した「新しい国のかたち」をつくることにほかならない。」

 今や、日本の衰退の原因は、中央集権体制にありと自信たっぷりに断言している。
 この中間報告がのべているように、中央集権体制が日本衰退の原因であれば、道州制導入は喫緊の課題である。
 明治の草創期には、外敵の脅威に対抗するためにも急いで中央集権体制にし国内の力を結集しなければならなかった。
 それ以来、長い間の中央集権体制も、確かに制度疲労を来たしているかもしれない。
 が、このことが直ちに地方分権に結びつくかどうか、中央集権体制のもととなった廃藩置県の背景を探り、また最近のグローバル化の潮流を見極めなければならない。
 道州制は、狂欄を既倒に廻らす切り札になるのか否か、軽々と判断するには過分な事案である。


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