日本の首相がアメリカ大統領に「抱き着き外交」する。戦後70年以上にわたりアメリカが日本の政治、経済、外交、安全保障について深くかかわりこれを支配してきた象徴的な姿である。
政権与党の幹部はこのような首相を余人をもって替え難いと高く評価する。国民もこれに特に違和感を覚えないようだ。
アメリカは長年にわたり日本の運命であったし今もそうである。そのようなアメリカを日本人はどこまで理解しているのだろうか。
結論からいえば日本人はほとんどアメリカを理解していない。日本人にアメリカを理解させるのは猿に小説を書かせるよりも難しいと皮肉をいう学者もいる。
事実われわれはアメリカを表面的にしか知らない。その最たるものは宗教であり契約である。
この世には神の意思しかない。死をふくめ病気、老衰などすべて人間の妄想にすぎない。
人間をなやますのは妄想を妄信しているあいだだけである。妄想を妄信しなければ人間は病気、老衰、死を迎えることもない。
実在するのは神だけであり神は善である。神を信じるものには病気、老衰、死は訪れない。
これはクリスチャンサイエンスであるがこれに類似するファンダメンタリストがアメリカ国民の4割を占めている。驚くべき数字である。
アメリカ人の4割もの人が人間は死なないと信じているのだ。このような説教をどれだけの日本人がまともに受け取るだろうか。
次に契約である。新天地を求めて移住した人たちには伝統もなければ慣習もない。いってみれば無法地帯に来たに等しい。
無法地帯のままでは生活できない。法秩序は生きていくうえで不可欠である。
アメリカ上陸前にピューリタンを中心としたメイフラワー号の乗船客が結んだ「メイフラワー契約」はルソーの契約によって社会を作るという社会契約論が発表される140年以上も前に社会契約説を地でいっている。
アメリカは自然発生的ではなく人類史上初めて人工的に造られた国家である。片言隻句にわたり契約書に記載する原点がここにある。
日本は自然発生的に国家誕生し慣習や因習に縛られている。契約は阿吽の呼吸、細かいことを書かず、問題が発生したら誠意をもって協議することですべてをカバーする。
宗教と契約については日米の間には天と地ほどの開きがある。それにもかかわらず70年以上にわたり運命を共にしてきた。
日本はアメリカを理解しないままただ抱き着いてきたといっていい。問題はこれからもそれでいいのかどうかである。
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