2015年11月16日月曜日

日本型資本主義 3

 ”ウォール街から世界を席巻した、強欲を原動力とするような資本主義” と再登板前の安倍首相が語ったようにアングロ・サクソン型資本主義は日本人に対して必ずしもよい印象を与えていない。
 
中国は鄧小平の号令によりそれまでの計画経済から社会主義的市場経済政策を採用し資本主義への道を歩むかと思われたが現状はとても資本主義とは言えない。資本主義の母胎となる自由な社会基盤を欠くからである。
 日本は海外の社会科学者から最も成功した社会主義国だと皮肉を込めて揶揄されるように真の資本主義社会とは言えない。
 資本主義社会ではあり得べからざる度を過ぎた官僚の介入を許しているからである。
 資本主義精神である目的合理的精神と行動的禁欲はアングロ・サクソンのピューリタンの中で芽生え発展した。

 アングロ・サクソン型資本主義こそ資本主義の本家本元である。
 資本主義発祥の地イギリスは、中世時代の海賊の本性を発揮し海外の植民地から富を略奪し資本を蓄積し、その資本で産業を興し資本主義社会を実現した。
 資本を蓄積した社会はイギリス以外にも数多く存在したが、何処にも資本主義は芽生えなかった。
 資本主義の精神を欠いていたからである。
 資本主義社会は革新的な企業家・経営者と資本を提供する資本家・銀行家によって成り立つ。
 企業家・経営者は株主利益を最大化するように目的合理的に経営する。
会社は株主のものであるからである。

 ドナルド・ドーアは自著 『金融が乗っ取る世界経済』 のなかで次のように言っている。
 「資本主義が発達するにつれ経済の中で金融の占める割合が大きくなってきた。企業利益のなかで金融の占める割合がアメリカでは1946年から50年の間に9.5%だった金融業の利益の構成比は、2002年に41%に達した。・・・・・
 新自由主義思想が支配する民主国家では、生存権、発言の自由など様々な権利があるが近年 ”所有権” が他の権利より優勢になってきた。」 と。
 新自由主義的アングロ・サクソン型社会では経済の金融化がすすみ富の分配が不均等になり、格差が拡大する。
 またデリバティブ、サブプライムローンに見られる不確実性、不安の増幅と信用の失墜が見られるがこれらは金融資本主義に伴い発生する特性でいわば金融資本主義の副作用である。
 だが資本主義にはこれら痛みを伴う副作用を補って余りある特性がある。
 イノベーション・革新である。近年のイノベーションはバイオ、インターネット等すべてアングロ・サクソン資本主義社会の中で育った。
 資本主義社会でイノベーションが起きなかったらどうなるか。資本主義は衰退し行き着く先は、限られたパイを奪い合う活力なきゼロサム社会に成り果てるであろう。
 この意味において革新・イノベーションは資本主義の命と言ってもいい。
 アングロ・サクソン型資本主義は、劇薬であり、これを飲むにあたっては副作用も覚悟の上でということになる。
 瑞穂の国はいずれの道を採るべきか。

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