2013年3月25日月曜日

TPP 1

 3月15日安部首相はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉への参加を正式に表明した。国論が二分している中での交渉参加表明である。
 一旦参加表明したからには簡単に引き返せるとは思えない。安部首相は既にルビコン河を渡ってしまったのかもしれない。
 まず、TPPのAPECに占める割合と日米の割合、TPPのメリット、デメリット及び自民党の交渉参加の判断基準を見てみよう。

1  APEC全体のGDPにTPP交渉参加国が占める割合

TPP交渉参加国:             70.7%(日本参加前55.2%)
その他のAPEC参加国・地域:     29.3%(日本参加前44.8%)
日本参加によるTPPの日米の比率: 80.3%  (出典 IMF World Economic Outlook Database)

2  TPP協定のメリット及びデメリットとして指摘される点(例)

2-1 TPP協定のメリット
(1) アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)へのステップとなる。
(2) TPP協定参加国間で互いの関税をなくしていくことで、貿易が盛んになる。
(3) 日本の製品がTPP協定参加国の国内製品と差別されないようになる。
(4) 日本の技術やブランドが守られるようになる。
(5) 日本企業が行った投資がTPP協定参加国において不当な扱いを受けないようになる。
(6) 貿易の手続きやビジネスマンの入管手続きを簡単にすることで、中小企業も海外で活動をしやすくなる。

2-2 TPP協定のデメリット
(1) 原則として即時に全品目の関税の撤廃が求められ、その結果、農業の衰退や自給率の低下を招くのではない
か。
(2) 安全ではない食品が増加したり、食品の安全基準が緩和されるのではないか。
(3) 公的な医療保険を受けられる範囲が縮小されてしまうのではないか。
(4) 質の低い外国人専門家(医師・弁護士等)や単純労働者が大量に流入するのではないか。
(5) 地方の公共事業が海外の企業にも一層開放されることで、海外の企業に取られてしまうのではないか。
(6) 外国人の投資家が訴えることで、日本の国内制度を変更させられるなど、国家主権にも影響が及ぶのではない
か。(ISDS制度)            (出典:地域シンポジウムで配布された内閣官房作成資料)


3 自民党のTPP交渉参加の判断基準

(1) 政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。

(2) 自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
(3) 国民皆保険制度を守る。
(4) 食の安全安心の基準を守る。
(5) 国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。
(6) 政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。

 TPPは日本が交渉参加すれば、APECに占める割合が圧倒的となり、TPPは実質日米EPAに近い。

 安部首相は、自民党の6条件のうちの第1項目がクリアされたとの理由で交渉参加を表明した。
 その他の条件は、交渉で勝ち取る、これが敵わなければ交渉を辞退するといっている。
 はたして、上記のようにTPP参加国のなかでGDPの比率が高く存在感ある日本が、一旦交渉参加表明した後、主張が通らなかったという理由で辞退できるのだろうか。
 TPP交渉参加国は本年10月に成案を得る計画である。日本がTPP交渉に正式参加できるのは、米政府が議会に通知してから90日後というルールがあるため、日本が交渉のテーブルに参加できるのはTPPのスケジュール上僅か1回のみという可能性が高い。
 この1回だけの交渉で先行する参加国に日本の主張を認めさせ覆させることができるのか。そんなことができる交渉能力があるのか。
 ともあれ、激しく国論が二分する中、日本の首相は、交渉参加を決断した。国内の賛成派も反対派も、舌鋒鋭く相手を攻撃し議論が収まる気配がない。
 しかもそれぞれ理路整然と自論を展開しているので、はたしてどちらが国益に適うのかなかなか一概に決めかね迷うばかりである。面倒だから、エイヤーとサイコロでも振って決めたくなる。
 しかし、ことが、参加するにしろ、辞退するにしろ、日本に与える影響は大きいのでそんなことはいっておれない。
 否、むしろこういう時こそ国民一人ひとりにポリティカル・リテラシーを求められる時ではないか。
 これにより日本の今後の進路がきまり、国のかたちが変わる程の影響があるかもしれないと思えばなおさらそうである。。
 次稿で、判断の糧として、TPPの背景を探りたい。

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