2013年3月4日月曜日

領土問題 2

緊迫する尖閣諸島の領有権問題で、対峙する中国と向き合うには、中国をよく知らなければならない。
まず、中国共産党の組織を見てみよう。
      
政治局常務委員   7人  (総書記・国家主席 首相、全人代常務委員長ら)
政治局員       25人  (地方の書記ら)
中央委員・候補   376人
党大会代表     2270人
党員        8260万人                   (2012年11月時点)

 中国は、人口13億5千万人のうち、約6%が共産党員で、そのうちわずか7人による指導体制である。
 中国は共産党という官僚組織によって運営されている国家である。
 官僚組織は、管理者によって定められた規則に準拠して運営される。その特徴は、非合理的なものを一切排除する。教育と登用試験によって専門家を育成する。規則にもとずき処理する。
 そこには我々が考える国民主権にもとずく民主主義の思想は一切入りこむ余地はない。
 マックス・ウエーバーが定義するビューロクラシーは、権限・階層(ヒエラルキー)・専門性の原則にもとずき、これらが文書主義によって、機械のように機能する組織である。
 彼は論文「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の最後でビューロクラシーについて、警告を発している。
 「精神のない専門人、心情のない享楽人、。この無のものは、人間性のかって達したことのない段階にまですでに登りつめた、と自惚れるだろう」と。
 マックス・ウエーバーの警告は中国共産党において現実となりつつある。
 次に、中国の行動様式を正しく理解しなければならない。この理解を間違えると、その後の対処の仕方が不適切になる。中国は共産党一党支配によって成り立っている。その他の政党は認められていない。
 中国共産党規約 総綱では、「党の最高の理想と最終の目標は共産主義を実現することである。中国共産党はマルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論と「三つの代表」という重要な思想をみずからの行動の指針とする。」とある。
 三つの代表とは、江沢民が2000年に発表した思想で、
先進的な社会生産力の発展の要求先進的文化の前進の方向最も広範な人民の根本的利益
 以上の三つからなっており、いまなお中国共産党の理論の根幹である。
 中国共産党規約 総綱で一貫している主張は共産党指導による社会主義の実現である。
 以上を国是としているのが中国という国家である。我々はこのことを腑に落とし込んでおかなければならない。
 中国の指導者がたびたび口にする”核心的利益”なるものの思想的背景はこの行動指針にもとずくものであろう。
 我々は、ともすると自国の基準で、他国も判断しがちだが、この中国共産党規約 総綱をみるかぎり日本の基準など比較対象にもならない。
 我々は、現実に、かかる組織をもち、かかる行動様式をとる国家と対峙している。
 かかるユニークな国家と向き合うには一体どうしたらいいのか。他に、参考となりうる多少なりとも類似の組織・機能集団はないものか。
 思いあたる節がないではない。唐突かもしれないが、先の大戦時の日本の陸軍および海軍である。
 組織の理論があらゆるものに優先し、それに歯止めをかける装置が欠如している。統帥権に守られて事実上、国民国家から独立した組織となっている。そこには、国民の意思より、組織の論理が優先され、すべての事案がこれにもとずいて冷徹に決裁される。これらは、組織の運営という視点で見れば、中国共産党にも共通点を見出せる。
 中国を理解し、対峙するには、意外と、これら日本国民に馴染みのある組織に隠されたヒントがあるかも知れない。
 かって毛沢東はいった「核戦争になっても構わない。世界に27億人がいる。半分が死んでも後の半分が残る。中国の人口は6億だが半分が消えても3億がいる。われわれは一体なにを恐れるのだろうか」 
 中国を理解するのは容易ではない。現代中国の指導者が毛沢東の思想をどう受け継いでいるのか知る由もない。
 が、尖閣諸島をめぐる紛争で、我々が逡巡している時間的余裕はない。知り得る限りの知識で対処する他ない。

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