2013年3月11日月曜日

領土問題 3

 前稿では、中国の政治体制と人民の行動様式について検討してきた。これを腑にしっかりと落とし込んでおき、つぎに現実に日本の脅威となっている中国の軍事力について検討したい。
 清王朝以前の中国は、西欧列強諸国によって、その潜在的強大さによって眠れる獅子として畏怖されていた。日清戦争以後その評価は覆り、帝国主義諸国の進出の場となった。さらに第二次世界大戦以降はかっての眠れる獅子がすっかり目覚め、新たな脅威となりつつある。
 中国は1992年2月に領海法(中華人民共和国領海及び隣接区域法)を制定し、南シナ海、東シナ海を自国領とした。この領海法を根拠に、国家海洋権益を断固守り海洋強国を建設すると宣言した。領海法は中国の国内法である。国際的に誰も認めていない。つまり中国は人の領土を勝手に自国の領土と法律に定め、これを断固守ると宣言したのである。
 2007年5月はじめて中国を訪問した当時のキーティング米太平洋軍司令官に対し、中国海軍の高官が、太平洋を分割し、ハワイより東をアメリカ、西を中国が管理してはどうかと真顔で打診されたと上院軍事委員会の公聴会で証言している。
 フィリピン、台湾、尖閣諸島を含む東南アジアの海は、友愛の海どころか騒乱の海となってしまった。
 下図は、アジア太平洋地域の各国の兵力を示すが、中国が突出しているのがわかる。

図表I―0―0―1 アジア太平洋地域における主な兵力の状況(概数)
                     (平成24年版防衛白書から)

 かって中国軍は物量的に日本に優っていても質的には劣勢だと見られていたが、近年その差は急速に縮小しているようだ、主力戦闘機に至っては、自衛隊のF-15と中国軍スホーイSu30MKKの比較ではSu-30MKKのほうが優位という専門家もいるほどだ。
 2013年の中国の国防予算は前年度比10.7%増の約11兆1千億円で日本の2倍を越える。
 しかもこれは公表分だけである。中国の軍事費は不透明で、実態は憶測の域をでない。このペースで中国の軍事力が拡大していったら、西太平洋は遠からず中国の内海になってしまうかもしれない。
 中国軍とくに中国海軍は、歴史が浅く、経験を要する海軍の戦力としては未だ日米に遅れをとっているという論調が目立つ。
 事実そうかもしれないが、弾道ミサイル、宇宙兵器などは、現時点においてさえ、日本のみならずアメリカにとっても脅威となっている。
 およそ戦いに際し、相手をいたずらに過大評価するのは、問題かもしれないが、過小評価することほど危険なことはない。
 特に対中国関係のおいてはそうである。何故なら、わが国においては、日清戦争、支那事変の記憶がそう遠くないだけに、中国を過小評価しがちであることは否めないからだ。
 相手の過小評価は間違いなく失策の元である。胸に刻み込んでおきべきことだ。
 以上で、尖閣諸島で対峙する中国が如何なる国であるか、また国家としてなにを目指しているのかおおよそのことは分かったので、次稿でわが国が中国とどうむきあうべきかを考えたい。

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