2017年8月14日月曜日

悲観大国ニッポン 2

 自分の顔は鏡を通してしか見ることができない。ところがわれわれは自分の思考や行動パターンになると鏡の役目など思いもつかないで自分自身を熟知しているかのごとく考えかつ振舞いがちである。
 だが熟知していると思っているのは錯覚にすぎないのではないか。自分自身を知るのは難しい。同じ失敗を繰り返す人が多いのがその証左である。
 失敗を繰り返す人はおおにして周囲の忠告に耳をかさず客観的に自分を見ようとしない。
 このことは国家や民族についても言える。外国人の日本論はわれわれが気づかないことを教えてくれることがある。
 そこで視点を変えて外国人の日本論をとりあげこれを検証してみよう。

 まず、フランスの思想家ジャック・アタリの日本論について

 ”欧州の知性”とか”欧州の頭脳”と形容されるほどこの高名な思想家は彼の代表的な著作で日本の近未来について悲観的な見方をしている。

 「日本は世界でも有数の経済力を維持し続けるが、人口の高齢化に歯止めがかからず、国の相対的価値は低下し続ける。
 1000万人以上の移民を受け入れるか、出生率を再び上昇させなければ、すでに減少しつつある人口は、さらに減少し続ける。
 日本がロボットやナノテクノロジーをはじめとする将来的なテクノロジーに関して抜きん出ているとしても、個人の自由を日本の主要な価値観にすることはできないであろう。
 また、日本を取り巻く状況は、ますます複雑化する。例えば、北朝鮮の軍事問題、韓国製品の台頭、中国の直接投資の拡大などである。
 こうした状況に対し、日本はさらに自衛的・保護主義的路線をとり、核兵器を含めた軍備を増強させながら、必ず軍事的な解決手段に頼るようになる。
 こうした戦略は、経済的に多大なコストがかかる。2025年、日本の経済力は、世界第5位ですらないかもしれない。」(ジャック・アタリ著林昌宏訳作品者『21世紀の歴史』)

 ジャック・アタリが指摘するのは人口減、個人の自由の制限および国防費増の3点でありこれらにつき少し敷衍し問題点を明らかにしよう。
 ・ 人口減問題
 国立社会保障・人口問題研究所(平成29年推計)の日本の将来推計人口によれば、2015年の国勢調査で1億2709万であった人口が、2040年に1億1092人、2053年に9924万人、2065年に8808万人になると推計している。
 世界の人口が爆発的に増加すると予測されているのにこの日本の人口減予測は突出している。
 日本はこれまで移民を受け入れてこなかったがこの政策を撤回しないかぎり長期衰退は避けられないという。
 ー人口減は日本衰退の予兆として内外から指摘されている。

 ・ 個人の自由
 ユダヤーギリシャの理想は自由こそが究極の目的であり、また道徳規範の遵守ともなり、生存条件でさえあることを明確にした。
 ところが個人の自由は日本の主要な価値観ではない。それゆえ外国から有能な人材を集めることが出来ない。
 ー個人の自由・個人主義が徹底していないところに優秀な人材は集まらない。

 ・国防費の負担増
 中国、韓国、北朝鮮との関係は和解しなければならないが、話し合いでの解決は容易ではない。
 軍事的なオプションが必ず求められるであろう。その場合多大な費用負担を伴う。
 ー国防費の負担増はその他の縮減を伴い国力低下になる。

 ジャック・アタリは日本に対し悲観的である。日本はかって世界の中心になるチャンスがあったのに国を開放せず移民を受け入れなかったことなどのためそれを逃した。
 近未来には世界の中心になる資格などなくむしろ凋落の一途をたどるだろう。

 2011年1月中央大学における講演で21世紀の世界のシナリオで日本について少子化以外の要因も挙げて悲観的に言及している。

 「第1段階はアメリカの相対的凋落だと言った。ヨーロッパは連邦化が進み上昇するが、日本は沈むだろう。
 日本は国家債務が多すぎ、少子化に有効な手が打てず、政府は勇気ある増税策を取れないから、危機から脱するのは難しい。
 しかしナノテクノロジー、バイオテクノロジー、ニューロサイエンス、情報技術といった、教育や医療に有効な技術的ポテンシャルを日本は持っている。その強みを生かせるかどうかだ。」

 未来に希望がないわけではないが、日本の命運は半ば尽きたと言わんばかりの日本論である。

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