企業の英語重視の流れが進んでいる。ユニクロのファーストリテイリングと楽天は2012年から先陣を切って社内の公用語を英語にしている。
この2社が社内の公用語を英語にすると発表した後、ホンダもそうすべきではないのかと問われた当時のホンダの社長は ” 日本人が集まる日本で英語を使うなんて、そんなバカな話はない ” と一笑に付した。
だがその後社長が交代したホンダは昨年6月、2020年を目標に社内の公用語を英語にすると発表した。
このほか英語の公用語化を検討中もしくは公用語化しないまでも、TOEICの点数を昇給や昇格の条件にする等企業が英語を重視する政策の流れは加速している。
今や日本のサラリーマンは英語ができなければ昇進もおぼつかないご時勢となりつつある。
企業の英語重視政策は企業内に止まらずこの勢いが続けばいずれ国民全体へ波及するであろう。
この流れはなにか 『変だ』 と感じる人もいるだろうし、 『時流』 だから乗り遅れるべきではないという人もいよう。
企業の英語重視姿勢の流れをみる限り前者より後者が多数を形成しつつあると推測されるが、ここでは原点にかえってこの問題を考えてみたい。
まず英語公用語化に熱心でかつその想いを積極的に発信している楽天の三木谷社長兼会長の話に耳を傾けてみよう。
産業競争力会議の民間議員でもある三木谷氏は同会議で他の議員から突出して英語に関連する発言が多い。
以下は同会議議事録から三木谷議員の英語関連発言の抜粋である。
「日本は、TOEFL で韓国に比べて 10 ポイント低く、アジアで下から2番目であり、英
語教育が重要。 (第1回 2013/1/23)
日本の産業、企業、そして日本の国民のより一層の国際化、とりわけ英語教育がま
すます重要になってくるのではないかと思っている。
当然、我々も自由貿易で、様々な
新しいオポチュニティも出てくると思うが、一方で、海外企業との競争も激化するのは
間違いないと思われるため、とにかく英語力のアップ、産業力のアップというものがま
すます重要になる。(第 3回 2013/2/26)
英語教育についてだが、最後のところに『TOEFL 等』と、『等』という言葉が
入っている。
『TOEFL 等を使う』と『TOEFL を使う』というのでは全く意味合いが違う。
入試等については TOEFL に統一すべきである。
(第10回 2013/5/29)
できるだけマーケットに任せ、国又は役所の関与は最小限にすべき。一番重要
なことは、いかに日本人を国際化していくか、また、独立自尊の精神を推進していくか
ということであり、英語教育は非常に重要である。
この観点から、大学入試及び国家公
務員試験に TOEFL を採用しようという話をしていたが、今回の最終案の中で『TOEFL 等』などとなってしまったことは大変残念だ。
(第12回 2013/6/12)
英語のところで、日本の大学教育のところに書いてあるが、日本人の意識
を変えるというところにおいて一点突破ということでいうと、大学入試を変えていく、
TOEFL に変えるということは重要。
そこももう少し強調していただきたい。分かりやす
くて外国の受けも良いのではないかと思っている。また、海外の優秀な人材をどうやっ
て入れていくかということにおいて、日本人の本当の英語レベルが上がるということが
長期的にはとても大切。
これはキーの戦略の一つだと思っている。
(第13回 2013/9/2)
世界の知能を集めること。以前申し上げたが、日本のコンピュータ・サイ
エンス専攻者は約2万人。アメリカが 36 万人で、中国が 100 万人という状態である。
世界の知能を集めるということが重要で、資料2-1に外国人高度人材の活用というこ
とがあるが、その中に明確に実用英語教育の抜本的強化ということを入れていただきた
い。
(第15回 2014/1/20)
、英語教育について。文科省の方でかなり積極的に推進をしていただいているが、
教育を実用英語に変えていこうという動きが大きく動き出していると感じている。
ただ、
最後の段階である程度、各大学の裁量の余地を残してしまうと、実質的に進まないとい
うこともよくあるため、ぜひ総理の強い指導力で英語教育改革を目指していただければ
と思う。 (第16回 2014/6/10)
国際化という意味では中国が今アメリカに約 20 万人の留学生を送っ
ている。下村大臣の御尽力によって英語の入試改革は進んでいっているが、日本人、日
本の社会の内なる国際化というものも是非さらに強化していただきたいと思っている。
(第20回 2015/1/29)」
このような三木谷議員の熱心な働きかけが功を奏してか、産業競争力会議の下部組織であるクールジャパンムーブメント推進会議は、2014/8/26 公用語を英語とする「英語特区」創設などを盛り込んだ提言をまとめ、稲田朋美担当相に提出した。
政府は2020年東京五輪・パラリンピックに向け、文化発信に関する施策に反映させる考えだ。
その提言内容はこうだ。
「クールジャパンムーブメント推進会議は、海外と活発に交流できるコミュニケーション能力を獲得することをミッションとし、アクションプランの一つとして 公用語を英語とする英語特区をつくる。
グローバルランゲージとしての英語を活用せざるを得ない環境を体験できるようにすることで、 日本人の英語能力を向上させて、外国人と躊躇なくコミュニケーションできるようにする。
公用語を英語とする特区を創設し、気軽に 『英語漬け』 環境 に親しめる状況をつくる。
例えば、特区内では公共の場での 会話は英語のみに限定する。
また、視聴できるテレビ番組は 副音声放送がある番組とするほか、販売される書籍 ・ 新聞は 英語媒体とする。
特区内で事業活動する企業が、社内共通語 の英語化や社員の英語能力向上に資する活動を積極的に展開 する等の一定条件を満たした場合、税制上の優遇措置を図る。」
(2014/8/26 クールジャパン提言から)
英語を公用語化とする特区創設を提言されるまでに至ったのは、三木谷議員の尽力これありによるといっても過言ではない。
あとは政府の施策に反映されるのを待つばかりとなった。
畏るべし三木谷議員、飛ぶ鳥を落とす勢い、ベンチャーの星。
これほどまでに影響力ありかつ熱心に英語公用語化を進める彼の基本的考え方の背景にあるのは何か。
三木谷氏の著作からそれを探ってみよう。
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