2016年2月1日月曜日

英語公用語化論 2

 三木谷氏が楽天の社内公用語を英語化した概略はこうだ。

 2007年3月のゴールドマン・サックス・グループ経済調査部が作成したレポートによると、世界の中で日本が占めるのGDP比率は2006年の12%から2020年に8%、2035年に5%、2050年に3%になると予測していた。
 このレポートを、楽天に突きつけられた問いと受けとめた三木谷氏は答えをだした。

 「 世界一のインターネットサービス企業になる。創業以来、この目標を掲げていた楽天にとって、もちろん答えは一つしかなかった。海外へ打って出て、真のグローバル企業になる。これ以外、僕らの進むべき道はない。」
(三木谷浩史著講談社『たかが英語!』)


 社内公用語を英語に変える理由はこうだ。

 「 なぜ楽天は社内公用語を英語に変えるのか。その理由をひと言でいえば、世界企業は英語を話すからだ。
 僕は、これからの日本企業は世界企業にならない限り生き残れないし、逆に、日本企業が世界企業への脱皮に成功すれば、日本をもう一度、繁栄できると考えている。」
(前掲書)

 英語はツール以外にも効用があると言う。

「 英語はツールに過ぎないと述べた。ツールという意味では、英語とパソコンの間に、たいしたちがいはない。
 経営者が社員全員に 『今後、業務にパソコンが必須なので、パソコンの操作を覚えてください』 と通達するのと、『今後、業務に英語が必須なので、英語を使えるようにしましょう』 と通達するのはまったく同じレベルの話なのだ。(中略)
 しかし、たかがツール、されどツールである。英語をツールとして使うことで、コミュニケーションのスタイルや論理的な思考形式に、よい影響を与えているところもある。
 その一例が、先ほど紹介した社内SNS『Yammer』 における活発な議論だ。英語だからこそ上下関係を越えた議論に発展したのだと思う。また、英語で話すことによって自然と論理的な離し方を意識するようになっている面もある。」

 英語公用語化に反対する人へ反論している。

 「 社内公用語を英語にすると言うと、『日本語を捨てるのか』 とか、『日本文化をないがしろにするな』 と目くじら立てる人がいる。もちろん社内公用語を英語にするからといって、楽天は日本語を捨てるわけでも、日本文化をないがしろにするわけでもない。 僕は国家レベルで公用語を日本語から英語にしてしまえと主張しているわけではまったくない。日本人にとって日本語が大切なことは言うまでもない。
 しかしグローバルビジネスを展開する上では、すでに英語がビジネス公用語になっているのだから、英語を使えるようにしようと言っているに過ぎない。
 国家レベルの公用語とビジネス公用語は区別して考えるべきだ。」(前掲書)

 日本人の能力と英語について持論を展開している。

 「日本人には勤勉さがある。技術力も、デザイン力もある。しかし決定的に欠けているものがある。グローバルなコミュニケーション能力だ。
 特に、この能力の重要な要素の一つ、英語力が、日本人には不足している。もし日本人に英語力があったなら、今日のような経済的な凋落を招くことはなかったと思う。
 英語を通じて、世界のビジネスの動向に注意を払っていれば、もっと早い段階で、『ものづくり神話』 は崩壊するという認識をもつことができたはずだ。
 今からでも遅くはない。国家レベルで、国民の英語力の底上げに取り組むべきだ。僕は、じっさいに楽天の社内公用語英語化に取り組んでみて、ますますその思いを強くしている。
 くり返すが、僕は決して、日本語を捨てろとか日本語の教育をやめろと主張しているわけではない。日本語も、日本文化も大切にすべきであることは言うまでもない。
 日本語と日本文化を大切にすることと、英語力を鍛えることはちゃんと両立する。それどころか、日本の良さを世界に広める手段として英語力が活用できる。英語力を鍛えることは、日本を大切にすることにつながるのだ。
 もし日本人が英語力を身につけ、グローバルなコミュニケーションができるようになれば、日本は世界でも類を見ないほど経済的に強い国になるだろう。
 日本人が従来から備えている勤勉さ、技術力、デザイン力に、グローバルなコミュニケーション能力が加わるのだから当然だ。」
(前掲書)

 三木谷氏の主張を一言でまとめればこういうことになろう。

 日本が世界の中でGDP比率が縮小するのは、人口減少する限り食い止めようがない。このグローバル化の時代に日本が生き延びるには世界に打って出る以外に道はない。
 世界に打って出るにはビジネス公用語の英語習得は不可欠だ。楽天はその尖兵になる。

 つぎに英語公用語化に反対する意見に耳を傾けてみよう。

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