2019年5月13日月曜日

揺らぐアメリカ 3

 アメリカ人がいかに信心深いか。このことはアメリカを知るうえで欠かせない。次に移民について正しく認識することが重要である。
 アメリカについての多くの誤解は「アメリカは移民の国」であり人種も民族も文化も多種多様なものから構成されていると信じられていることだ。
 これは一面の真実を語っているがアメリカのすべてを物語っているわけではない。
 アメリカが移民の国であることに違いはないがそれがすべてではなくアメリカには別の顔がある。

 「入植者と移民は根本的に異なっている。入植者は、一般に集団で既存の社会を離れ、たいていは遠くの新しい土地に、新しい共同体を、『山の上の町』をつくりだす。彼らは集団としての目的意識を吹きこまれているのだ。
 入植者は、彼らが築く共同体の基礎と、母国にたいする集団としての関係を規定する契約または特許状に事実上もしくは正式に署名する。
 一方、移民は新しい社会を築くわけではない。彼らは一つの社会から別の社会に移動するのだ。
 移住は一般に個人や家族にかかわる個人的な行為であり、彼らは祖国と新しい国との関係を個人的に定義づけている。 17世紀および18世紀の入植者がアメリカにやってきたのは、そこが白紙の状態だったからだ。先住民の諸部族はいたが、絶滅させられるか西部へ追いやられ、彼ら以外はその地にどんな社会も存在しなかった。
 そして入植者たちがやってきたのは、祖国からたずさえてきた文化と価値観を具体化し、それらを促進できる社会をつくるためだった。
 のちに移民がやってきたのは、入植者が築いた社会に加わりたかったからだ。
 入植者とは異なり、移民とその子孫は、自分たちがもちこんだ文化とはおおむね相容れない文化を吸収しようと試みるなかで『カルチャー・ショック』を味わった。」
(サミュエル・ハンチントン著鈴木主税訳集英社『分断されるアメリカ』)

 入植者および2世、3世のアメリカ人と新たに移民となったアメリカ人との間には同化の程度によって明らかに違いがある。
 この違いにお構いなく「アメリカは移民の国である」と片づけるのは乱暴すぎる。外国人だけでなくアメリカ人にもそういう人がいる。
 次表は米国への地域別移住者数の推移である。



縦軸は外国人で永住権を取得した移民人数 (領土獲得に伴う住民およびプエルトリコからの460万人の居住者は含まず)
出典:アメリカ合衆国国土安全保障省その他データからMr Masaqui作成

 第二次世界大戦まではアメリカへの移住者は殆どがイギリス出身者であった。
 第二次大戦後から1960年ごろまではイギリス以外の西欧諸国出身者が主な移住者であった。

1960年主要5か国の移民
イタリア  1,257千人
ドイツ    990
カナダ    953
イギリス   833
ポーランド  748


ところが1970以降は主に中南米出身者が占めるようになった。


2000年主要5か国の移民
メキシコ  7,481千人
中国    1,391
フィリピン 1,222
インド   1,007
キューバ     952  
 (前掲書から)

 米シンクタンクのピュー・リサーチセンターによる最近の調査ではアジア出身者が中南米を上回っている。

2016年主要4か国の移民
インド   126千人
メキシコ  124
中国    121
キューバ    41

 同シンクタンクの予測によると2055年までにアジアが最大となり2065年の移民人口構成はつぎの通り。
アジア系    38%
ヒスパニック系 31%
白人系     20%
黒人系       9%

 アメリカへの移住者は第二次世界大戦以降明らかにその出身地域が従来とは全く異なっている。
 アメリカは第二次世界大戦後ソ連との冷戦に勝利し揺るぎない覇権国となった。それに至る過程で移民の存在は無視できない

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