フランスの経済学者トマ・ピケティは、15年の歳月を費やして200年以上の資産や所得の厖大なデータを収集・分析した。
その結果、資本主義の下では株、債権、不動産などの資本から得られる配当、利子、賃料などの収益の増加率が労働によって得られる賃金の上昇率を常に上回り格差は拡大し続けるばかりと結論づけた。
18世紀の産業革命から2010年まで世界の経済成長率は平均1.6%であったが資本収益率は4~5%であったという。
この分析結果をもとに彼は格差拡大のメカニズムを不等式 r>g で説明した(rは資本収益率、gは経済成長率)。
次図は高額所得者の所得シェアの国際比較である。第二次世界大戦で所得格差が大幅に縮小したが戦後再び拡大している様子が見てとれる。
日本の場合上位10%のシェアでは図のように米英などアングロサクソン寄りとなっているが、上位1%のシェアではドイツ、フランスなど欧州大陸寄りになっている。
これは日本の格差拡大の問題点が富裕層の増加より低所得層の増加にあることを示している。これを裏付けるように所得が中央値の半分に満たない人の割合を示す相対的貧困率が1985年の12%から2012年の16.1%に上昇している。
格差拡大は以前から問題とされてきたがピケティによって改めて大々的にクローズアップされた。格差は資本主義の宿命であるのでこれが対策としてピケティは累進課税の富裕税を提案している。
だが、最近は資本主義の宿命などで済まされそうにないことが起こりつつある。
人工知能AI時代の到来である。この未だかって経験したことがないような革命が到来すれば格差問題の処方箋も従来の考え方を捨て去らなければならないかもしれない。それほど深刻かつ差し迫った問題である。
それは今われわれが理念としている自由とか民主主義をも否定しかねないほどの破壊力をもっている。以下AIについて格差問題に焦点をあて考えてみたい。
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