2016年12月12日月曜日

北方領土 1

 領土問題は一筋縄では行かない。今も昔も。それが平時であればなおさらそうだ。
 ロシアのプーチン大統領と安倍首相は今月15日に首相の郷里山口県の長門で会談する。
 なんと両首脳同士の会談は16回目になるという。お互いファーストネームで呼び合うほどの間柄でさぞかし経済協力と抱き合わせの北方4島の領土交渉も進展するのではと期待されたが、その日が近づくにつれトーンダウンしている。

 北方4島関連のいままでの経緯はこうだ。

 ・1956年の日ソ共同宣言で歯舞群島・色丹島を日本に引渡す。
 ・1993年の東京宣言で4島の帰属の問題を解決し、平和条約を早期に締結する。

 これらの宣言にかかわらず、最近になってプーチン大統領は日ソ共同宣言の歯舞・色丹の2島引渡しには主権が含まれているとはどこにも書いていないと言い出した。
 歯舞・色丹は当然主権を含めて返還されるものと思っていた日本側はプーチン大統領の話に吃驚仰天した。
 西欧諸国からの経済制裁、原油下落、通貨ルーブルの暴落と三重苦にあえぐロシア経済、それに2018年に大統領選挙を控えていることもあり、プーチン大統領にとって領土問題の譲歩は考え難い。
 それはクリミア併合でロシア国民の圧倒的支持をえているプーチン政権の人気離散を意味する。
 一方、領土問題で後退するようなことになれば期待が大きかっただけに安倍政権にはダメージとなる。
 首脳同士の波長が合えばうまくいくと考えがちだが国家間の付き合いはそれほど甘くはない。
 現にプーチン大統領とアメリカのブッシュ元大統領はウマが合ったといわれたが中東紛争ではことごとく対立した。
 かって田中角栄は首相就任直後、国交正常化のため北京に飛んでいった。
 毛沢東や周恩来は、苦労して主席や首相になった。
 中国と正式な国交がない状態を解決するには、自分と同じように苦労した彼らが権力の座にいる今をおいて他にない。
 率直に話をすれば必ずわかってくれる筈だ。”蛇の道は蛇”、角栄首相の想いは通じみごと日中共同声明を発表して、中国と国交を結んだ。
 プーチン大統領と安倍首相、ともに返り咲きの長期政権、既に15回も会談している。
 政権の長さや会談の多さだけでは、”蛇の道は蛇”、とはいえない。この両首脳には”同床異夢”という言葉がふさわしいようだ。

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