2016年4月11日月曜日

トランプ旋風 3

 アメリカ大統領予備選挙で吹き荒れているトランプ旋風はアメリカ政治がターニングポイントにさしかかっていることを示唆している。
 覇権国であるアメリカの政治が転換点をむかえれば世界に及ぼす影響は大きい。
 アメリカは真珠湾奇襲攻撃を受けるまでは建国の国是でもある非同盟を貫いてきたが、真珠湾奇襲を機にそれまでの内向き政策をかなぐりすてた。
 第二次世界大戦を機に対外干渉をすすめついには覇権国の地位を不動のものにするまでに至った。
 だが第二次大戦後70年経過しアメリカを覇権国に持ち上げた原動力となったグローバリゼーションは制度疲労をおこしその影の部分が頭をもたげつつある。
 アメリカ社会の歪みである国民の間の格差が大きくなり国民の不満が蓄積されそれが限度に達しつつある。
 地層のプレートの歪みが限度まで達すると地震で補正されるように社会の格差も限度に達すれば補正される力がはたらくであろう。
 このような時機に登場したのがトランプ氏であり、サンダース氏である。
 彼らの活躍はアメリカ社会の歪み是正現象として捉えることができる。
 この流れを意図してか否かトランプ氏は、はっきりと内向き政策を掲げアメリカ国民の支持を集めている。
 仮にトランプ氏がアメリカ大統領に選出されれば、アメリカの内向き政策はすすみ、その結果アメリカは覇権国から転落の一途を辿るだろう。
 覇権国とは、経済的にも軍事的にも他国に干渉しその影響力を及ぼすゆえに覇権国たりうるのであって、内向き政策に終始する覇権国などありえない。
 ただ、次なる覇権国候補がはっきりとしないためその移譲は緩慢となろう。
 一方、仮に共和党主流派候補や民主党クリントン氏が大統領選挙で勝利すれば、アメリカのエスタブリッシュメントは胸をなでおろし従来どおり自らに有利な政策実現に邁進するであろう。
 格差是正の声はかき消され、グローバル化は極限に達する。最悪の場合、アメリカは中間層が少なくなり大多数の貧困層とごく一握りの富裕層で形成される社会になりはてる。
 しかもこの場合もアメリカは覇権国から転落の一途を辿ることはおなじである。なぜならアメリカの国力が衰退するからである。
 アメリカのGDPの7割は消費によっている。消費を支える圧倒的多数の中間層が少なくなればその結果どうなるか。
 富裕層の消費には限度があるし、貧困層は消費できない。GDPの7割を消費に依存するアメリカ経済は縮小の憂き目にあう。
 経済が縮小すればそれに伴い軍事も縮小する。そうなれば覇権国の地位は危うくなる。
 トランプ氏は偉大なアメリカを取り戻すといっている。覇権国から転落した偉大なアメリカとはどんなアメリカだろう。
 もともと、内向き、孤立主義、非同盟は、アメリカ建国の国是である。
 そうであればトランプ氏は、建国の父達の先祖返りということになる。
 もっともアメリカ建国の父達はすべて教養ある人々であったという。彼らは泉下でトランプ氏の演説を聞いてさぞかし眉を顰めていることだろう。
 どの候補がアメリカ大統領になっても衰退するアメリカの流れをせき止めることはできない。
 トランプ旋風はわれわれにアメリカ時代の終わりの始まりをはっきりと知らせてくれた。

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