2015年7月20日月曜日

突出するドイツ 1

 とにかくやれ! (Just do it !) 
 先週末ドイツZDFテレビはドイツのショイブレ財務相がギリシャに対しこう言って怒っている映像を流した。
 ギリシャ救済をめぐるユーログループ会議でドイツがユーロ圏の盟主であることをまざまざと見せつけた。
 ドイツ主導の北欧諸国が救済を条件に南欧諸国に緊縮財政を強いる。 
 この構図がギリシャに対しまたも繰り返され、結果は全面的なギリシャの降伏におわった。
 いづれドルに替わって基軸通貨とも期待されたユーロであるがここにきて財政の統合を伴わない金融統合の綻びが目立つ。
 またイギリスのEU離脱の可否が国民投票に付されることが決定し、EU自体も磐石とは言い難い。
 ヨーロッパではユーロの恩恵をフルに享受し突出著しいドイツに対し厳しい視線を向けている人がいる。
 エマニュエル・トッド フランスの歴史人口学・家族人類学者である。
 彼はドイツはヨーロッパの問題であると言う。

 「ドイツは、すでに二度にわたってヨーロッパ大陸を決定的な危機に晒した国であり、人間の非合理性の集積地の一つだ。
 ドイツの『例外的』に素晴らしい経済的パフォーマンスは、あの国がつねに『例外的』であることの証拠ではないか。
 ドイツというのは、計り知れないほどに巨大な文化だが、人間存在の複雑さを視野から失いがちで、アンバランスであるがゆえに恐ろしい文化でもある。
 ドイツが頑固に緊縮経済を押しつけ、その結果ヨーロッパが世界経済の中で見通しのつかぬ黒い穴のようになったのを見るにつけ、問わないわけにはいかない。
 ヨーロッパは、二十世紀の初め以来、ドイツのリーダーシップの下で定期的に自殺する大陸なのではないか、と。」
(エマニュエル・トッド著堀茂樹訳文春新書『ドイツ帝国が世界を破滅させる』)

 ヨーロッパはドイツのせいで定期的に自殺者をだす大陸であるという。
 緊縮財政に苦しめられるギリシャ国民をみるにつけこの言葉に誇張はない。

 エマニュエル・トッドはドイツを制御しなければならないという。これに関連して日本にも言及している。

 「 『ドイツというシステム』は驚異的なエネルギーを生み出し得るのだということを認める必要がある。歴史家として、また人類学者として、私はおなじことを日本についても、スウェーデンについても、あるいはユダヤやバスク地方やカタロニア地方の社会文化についても言うことができる。
 好むと好まざるとにかかわらず認めるほかない事実として、ある種の文化はそんなふうなのだ。
 フランスは平等や自由の理念、世界を魅了する生活スタイルを生み出したし、知的、芸術的な面で先進国でありつつ、今では隣国よりも出生率の高い国になっている。
 もし現実的に判定を下さなければならないならば、結局のところフランスは人生というものについて、よりバランスがとれていて満足のいくビジョンを持っていると、たぶん認めるべきなのだ。
 しかし、ここで問題なのは形而上学でもモラルでもない。われわれは国際的な力関係の話をしている。
 もしある国が工業と戦争に特化したら、それをきちんと考慮し、そしてどのようにしたらその経済的・技術的な特化パワーの突出をコントロールできるのかを検討しなくてはならない。(前掲書)

 なぜドイツだけがユーロ圏で突出した経済発展を続けているのか、またなぜドイツは南欧で不評な緊縮財政を強要するのか、について改めて考えてみたい
 
 そして同じ敗戦国である日本がドイツから学ぶとすればなにか、人類学者であるエマニュエル・トッドが指摘した日本とドイツの共通点と違いを考慮し日本とドイツの行く末について考えてみたい。

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