民主主義から独裁主義への移行は必ずしもクーデターによるとは限らない。
多くの場合民主主義的プロセスを踏んでそれとは見えない手法によって独裁主義へ移行している。後者の場合独裁主義に移行する前には兆候があるという。
19世紀から現在までヨーロッパや南米で民主主義が崩壊し独裁主義となった国々を20年以上にわたって研究してきたハーバード大学のスティーブン・レベッキーとダニュエル・ジブラットは「民主主義の死に方」でその兆候を4つを挙げている。
1. ゲームの民主主義的ルールを拒否(あるいは軽視)する
2. 政治的な対立相手の正当性を否定する
3. 暴力を許容・促進する
4. 対立相手(メディアを含む)の自由を率先して奪おうとする
第45代アメリカ大統領ドナルド・トランプはこのすべてを備えているように見える。
民主主義的手法を軽視する彼の性向はいつでも独裁化へと暴走する危険を孕んでいる。
ただアメリカには過去、世界の混乱に悪乗りしたフランクリン・ルーズベルト大統領、赤狩り旋風を巻き起こしたジョセフ・マーカーシー上院議員、ウオータゲート事件のリチャード・ニクソン大統領など独裁的傾向ある人物がいたがいずれも独裁主義とはならず民主主義は守られた。
トランプ大統領も彼らに劣らずそのような性向をもっているかもしれないがその度合いが大きく外れているとも思えない。
将来はともかくアメリカが差し迫って独裁主義に突き進むことはなさそうだ。
問題とすべきは、唯一の超大国であるアメリカで国民の多くがなぜこのような独裁的傾向のある大統領を支持するのか、なぜ自由と民主主義と法による支配を旗印にしながらこれを脅かすような大統領を支持するのか、である。
自由と民主主義と法による支配はアメリカ人の信条である、また社会的不公正を許さない平等も彼らの信条である。
大多数のアメリカ人はグローバル化がもたらした経済的格差に不満を抱いている。社会的正義が損なわれたと感じている。
グローバル化社会では一部のエリートに富が集中する。その結果、個人の能力と富の所在が比例せず極端にアンバランスとなり経済格差は拡大する。
これに不満を抱いた大衆がグローバル化に反対しナショナリズムに走っている。
独裁的傾向があるにもかかわらずトランプ大統領が多くの国民から支持されている主な理由はこの国民の不満であろう。
覇権国アメリカを発信源としたグローバリズムは今や全世界を覆っている。一方これに不満を抱く人びとがアメリカだけでなくヨーロッパでも反対運動を展開している。
グローバリズムを正しく知ること、これなくして現代アメリカを知ることはできない。
0 件のコメント:
コメントを投稿