榊原氏の公務員論について以下順を追って検証してみよう。
① 日本の公務員は緒外国と比べ少ない、従って民主党が公務員の総人件費を2割削減するというのは間違いであると榊原氏はいう。
比較少数の公務員人件費削減に反対する彼の主張には一理あるが、日本の公務員が少数精鋭でどの国の公務員よりも働いているとの主張はそのまま鵜呑みにはできない。
公務員は国民を相手に仕事をしている。仕事の量は国民の民度とかエトスおよび福祉に大きく左右され、人口あたりの公務員数で単純に割り切れない。消費税率の高低が福祉を切り離して割り切れないように。
彼が示したデータから彼の説に従えば北欧諸国の公務員は日本の約5分の1の効率ということになる。乱暴な説である。
② 榊原氏は自らの経験で日本の発展にはエリートが必要であるという。そしてフランスのようなエリートシステムに羨望の眼差しを向けている。
先進国・発展途上国を問わずエリートは存在する。彼らは国家を代表しより高みに引き上げる牽引力になることもあるし、破滅へ導くこともある。
問われるのはエリートの資質である。
榊原氏は
「政治が劣化する一方、今でも日本のThe Best and the Brightest は官僚達、とりわけ財務省等の経済官僚達であることは変わりありません」
という。
では彼が言う財務省等の経済官僚達とはどんな人か。
有名大学を優秀な成績で卒業し公務員試験で序列上位のThe Best and the Brightestな人物である。
この条件で財務省に採用されるのは東大法学部出身が殆んどでその他が僅か。
そして入省時の成績がその後の昇進にも影響するという異常な世界である。
人間の能力はもともと多様で早熟もいれば晩成もいる。入省後の努力で才能を開花させる人もいるだろう。
これらを無視し何の疑問も感じない。このような閉鎖的なシステムに落とし穴がない筈がない。
もし民間企業でこのようなシステムを採用すればその会社は間違いなく競争から脱落すること受けあいである。
③ 現在の立法府たる議会は事実上官僚に簒奪されている。
議員は殆んど立法作業に携わらず官僚がこれを受け持っているからである。
議員の役割はロビイストにすぎないという。
かかる重要な立法作業を負託している官僚はもっとエリートの誇りをもって仕事をしてほしいと榊原氏はいう。
開いた口がふさがらないとはこのことか。官僚が立法を受け持つのをあたりまえと考えそれを異常な状態と考えない。真っ向から三権分立を否定しているといわれても仕方ない。現実はどうあれ三権分立を否定すれば如何なる結果を招くのか少しでも考えたことがあるのだろうか。
生涯33件の議員立法、間接的に関与した法案をあわせれば100件を超えた田中角栄元首相が例外中の例外扱いと受け止められている。この例外扱いの呪縛からの開放こそ立法府を機能せしめる一歩ではないか。
④ 官庁が公益法人や社団法人などへ出向し人事を回転させるのは、民間の大企業が人事を回転させるため子会社をつくりそこへ出向させるのと同じだと榊原氏はいう。
こんなことを大企業の社長が聞いたら唖然とするだろう。
結果としてそういうこともあるかもしれないが、利益を捻出するための子会社設立であって、人事回転のためでは断じたないと言うであろう。
これに比し官庁の場合はどうか、榊原氏も認めているように、事務次官などトップになる人は面倒見がよくなければならない。面倒見とは、天下り先をしっかりと確保・拡大させることである。
目が向いている先は国民ではなく自分の所属する省庁である。
官庁と大企業の目が向いている先を同じと決め付けるのは乱暴すぎる。
榊原氏は財務省寄りに財務省を論じたが、彼の主張は、彼の意図とは裏腹に、財務省と日本の官僚機構の宿痾を映し出す結果となっている。
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