米大統領選挙はヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの対決となり5ヶ月後には次期大統領が決定する。
1992年から2012年まで過去6回の米大統領選挙では、民主党4勝に対し共和党2勝であった。
選挙結果の内容をみると興味深い数字が浮かび上ってくる。米大統領選挙は州別の勝者総取り方式で選挙人総数538人である。
過半数の270人を集めれば大統領になれるが、過去6回に限っては民主党候補が取った州が選挙人242人、共和党は102人と州ごとに固定されていて圧倒的に民主党に有利である。
勝敗を決したのは選挙ごとにぶれるスイング州といわれる残りの19州の選挙人194人である。
スイング州の中でも大票田であるフロリダ29人とオハイオ18人は選挙の行方を左右した。
共和党不利のハンデを跳ね返し1999年の選挙で共和党候補から大統領に当選したジョージ・W・ブッシュはフロリダとオハイオのスイング2州で勝利している。
この選挙においてフロリダ州の選挙集計をめぐるトラブルは記憶に新しい。
因みにこの選挙はジョージ・W・ブッシュがアル・ゴアに一般投票で負けて選挙人投票で勝つという異例の結果でもあった。
さて今回はどうか。現時点で各種世論調査はクリントン候補有利と報じている。
英国の大手ブックメーカの一つウイリア・ムヒルの最新の賭け率はクリントン1.33 トランプ3.50 と圧倒的にクリントン勝利に賭けている。
過去6回の選挙で民主党の固定票ともいえる州の多さを考慮すれば当然の結果ともいえる。
過去の例から6ヶ月前の予測が大きく変わることがないともいう。
このことからもクリントン候補が勝つというのが妥当な予測であろう。
だが今回の選挙には意外性が潜んでいることも無視できない。
その一つが過去の民主党と共和党の対立構図がトランプ候補にはそのまま当て嵌まらないことである。
トランプ候補の主張は従来の共和党の政策と相容れずむしろ民主党の政策寄りである。
曰く、医療、年金の民営化拒否、公共事業推進、TPP反対、保護貿易、富裕層の増税など、どれをとっても民主党の政策そのものだ。このため共和党は事実上分裂の危機に瀕している。
トランプ候補の主張は民主党のクリントン候補以上に左派のサンダース候補の主張にちかい。このことは本選挙でトランプ候補がサンダース候補の支持票を奪いかねないことを意味している。
次にトランプ候補の属人的意外性である。
彼は意味のない演説を延々と、とてもアメリカ大統領候補にふさわしくない下品で野卑な言葉を使うが、票になるとおもえばそれまでの主張を変えるポピュリストである。
目的のためには手段を選ばないこの危うさは諸刃の剣で、票の獲得にどう左右するか蓋をあけてみなければわからないところがある。
格差に起因するアメリカ国民の不満の鬱積をどこまで吸収できるか。稀有なポピュリストの手腕の見せどころがそこにある。
今回の米大統領選挙は不毛の選択といわれる。嫌われもの同士の戦いとも。
クリントン候補が勝てば彼女の選挙資金の豊富さから政策のフリーハンドは望めずアメリカ社会の格差是正は掛け声だけに終わるだろう。
トランプ候補が勝てば国際社会は彼の品位のない言動を支持したとしてアメリカ国民のレベルを疑うだろうし、危うい人物が ”核のボタン” を握ったと懸念もするだろう。
それでもアメリカ国民はどちらかに投票しなければならない。
いまあえて選挙結果を予測すれば、よほどのことがない限りクリントン候補の勝利に揺るぎはないという見方に賛成する。
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