今回の安倍、プーチンの日ロ首脳会談は北方4島の帰属の問題を解決し平和条約を締結するという日本側の目標にどれだけ近づくことができるかが焦点であった。
決まったことは、北方4島で共同経済活動を行う協議を開始すること、これに尽きる。
4島の帰属問題については何ら進展はなかった。むしろ後退したと言える。
プーチン大統領は、4島が日本に返還されれば日米安保条約のもと日米がどう対処するか自分にはわからないが、と断りながらも、4島が事実上米軍の支配下に入るのではないかと懸念していたからである。
領土問題について進展がなかったから交渉は失敗であったと断定するのは事実に即していない。この問題については下の理由でもともと今回の交渉で期待できなかったからである。
北方領土については、プーチン大統領は一貫して領土問題は存在しないという厳しい見方であった。
ところがわが国では比較的楽観的な論調が目立った。それはメディアの責任が大きいと袴田茂樹氏はインタビューに答えている。
「朝日新聞は2012年、海外主要紙幹部とともにプーチン氏と会見した際、領土問題を『引き分け』で解決しようという発言を引き出した。
だがロシア政府の発表では、プーチン氏は1956年の日ソ共同宣言について『歯舞、色丹の引き渡し後、この2島がどちらの国の主権下になるかは書かれていない』とも述べている。
『引き分け』発言だけが報じられたため、日本国内で領土交渉の進展に対する期待が高まってしまった」
「今年5月の日ロ首脳会談後も、安倍首相とプーチン氏の間で領土交渉が進むのではないかというメディアの過熱報道が続き、楽天主義的な期待につながっている」
(聞き手・小林豪 2016年12月11日朝日新聞デジタル)
北方領土問題では、メディアの偏向した報道が世論を間違って誘導していたことは交渉結果からも明らかとなった。
一方、共同経済活動は、これが進展すれば島が帰ってくことにはならないが、平和条約締結への小さな一歩とはいえる。
これが意味するところは、単に経済的、領土的問題だけでなく中国を見据えた安全保障上の問題である。
ロシアが少なくとも敵対的勢力でなくなればわが国の安全保障上有利に働く。
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