2016年8月15日月曜日

終戦記念日

 今日は終戦記念日、例年この日に注目されるものの一つに政治家の靖国神社参拝がある。
 今年は超党派国会議員70名などが参拝したが、首相、外相、官房長官は参拝しなかった。防衛相はアフリカ出張中。
 2005年4月当時の中国の王毅駐日大使が自民党本部で首相、外相、官房長官 以上3人は日本の顔であり靖国参拝を遠慮する紳士協定ができていると発言したことが伏線となり、以来中国側は首相、外相、官房長官の靖国参拝を強く牽制してきた。
 ところが今年はこれに防衛相も加わった。中国は稲田防衛相を極端な右よりと判断して牽制したのだ。
 中国を不必要に刺激したくない現政権および中国と利害関係にある産業界、それに極東にあらぬ波風をたててもらいたくない米民主党政権は日本の対応に安堵の胸をなでおろしていることだろう。
 このような露骨な中国の内政干渉を日本政府は受け入れ同盟国のアメリカもこれを支持している。
 中国、アメリカおよび日本政府はこれでよしとするだろうが日本国民はこの政府の判断に心底から賛成しているのだろうか。

 似たようなことが尖閣諸島でもおきている。中国の漁船と海警局の公船が頻繁に領海を侵している。
 中国の真意は定かでないが尖閣諸島を領土問題化にすることがその目的の一つであるという見方がある。
 これに対し日本は尖閣諸島に領土問題は存在しないというのが一貫した立場である。
 ところがここでも中国と波風を立てたくない人がいる。親中派といわれる元外交官の孫崎氏などの尖閣諸島棚上げ論者である。 彼らも尖閣諸島は日本の固有領土であると考えるが、中国も同じように主張しているのだから棚上げしようというのだ。
 アメリカは固有の領土とか主権には関知せずと明言している。アメリカは施政権を問題にし尖閣諸島は日本の施政下にあるとの立場だ。アメリカ合衆国の成り立ちを考えれば固有の領土という概念にはなじまないのだろう。
 島国であるわが国は固有の領土という意識が強い。だが中国にしてもアメリカにしても領土をわが国ほど固定的に考えていないようだ。
 尖閣諸島を奪取するためにもまずこれを領土問題化・棚上げに成功すれば中国の思惑通りになる。棚上げで領土問題が決着するなど夢にも考えられない。
 領土問題はイギリスのチェンバレンがヒットラーに譲歩したように弥縫策が最悪の結果を招くことは歴史が証明している。
 とるにたらない小っぽけな土地をめぐる争いについてシェクスピア劇ハムレットの一幕は、領土問題が単に経済的・軍事的問題ではなく国家の尊厳にかかわると示唆している。尊厳をなくした国家に明日はないことは言うを俟たない。

 「あの兵士たちを見ろ。あの兵力、厖大な費用。それを率いる王子の水ぎわだった若々しさ。
 穢れのない野望に胸をふくらませ、歯を食いしばって未知の世界に飛び込んで行き、頼りない命を、みずから死と危険にさらす。 それも、卵の殻ほどのくだらぬことに・・・いや、立派な行為というものには、もちろん、それだけの立派な名文がなければならぬはずだが、一身の面目にかかわるとなれば、たとえ藁しべ一本のためにも、あえて武器をとって立ってこそ、真に立派と言えよう。
 そういうおれはどうだ? 父を殺され、母をけがされ、理性も感情も堪えがたい苦悩を強いられ、しかもそれをそっと眠らせてしまおうというのか? 
 恥を知れ、あれが見えないのか。二万のつわものが、幻同然の名誉のために、、まるで自分のねぐらにでも急ぐように、墓場に向って行進をつづけている。その、やつらのねらう小っぽけな土地は、あれだけの大軍を動かす余地もあるまい。戦死者を埋める墓地にもなるまい。」
(シェイクスピア 福田恒存訳『ハムレット』)

 
 終戦記念日が来るたびに靖国と尖閣、この二つの問題について考えさせられる。事態は年々悪化の一途を辿っているように思える。

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