2015年11月 教育事業を展開するEFエデュケーション・ファーストは非英語圏70ヵ国91万人を調査対象とした英語能力指数を国別にランキングして発表した。
これによれば北欧諸国が高く、南米、中東が低い。アジアやアフリカでは旧植民地国が植民地でなかった国より高い。
同じ言語系列であってもプロテスタント系が高くカソリック系は低い、国の規模では小国は高く大国は低い。因みに日本は70カ国中の30位である。
このデータが示唆するものはなにか。典型的な外国の言語事情を見てみよう。
まずアジアではフィリピン。フィリピンはスペインの植民地からアメリカの影響下になった。
このためフィリピン固有で古くから使われていたピリピノ語が第一公用語、英語は第2公用語となっている。
最近は日本から身近な語学留学先としてフィリピンを選ぶ若者もいる。英語が第2公用語となっているためたとえ教育を受けていない人でもそれなりに英語を話し理解する。
この国は英語が通用するため他のアジア諸国と比し経済的に離陸度が高いかというとそうでもない。むしろ低い部類に属する。
英語能力指数 ランキング62位のタイがアジアの経済優等生といわれている。英語能力と経済離陸度の相関関係は希薄としか言いようがない。
次に中東のイスラエル。この国の言語事情は特異である。
19世紀末リトアニアからパレスチナに移住したエリエゼル・ベン・イェフダーは独力で文章語のみであったヘブライ語を話し言葉として復活させた。古代の言語を復活させるという離れ業をやってのけた。
彼の功績によりイスラエルは建国時にアラビア語とともにヘブライ語を公用語として採用した。
なおイスラエルは世界中のユダヤ人がイスラエルに集結したため英語も実質的な公用語となっている。
このイスラエルの事例は土着・独自語から英語化という流れの逆のケースであり、社会実験的にも興味を引く。
そのイスラエルは経済的には中東地域の優等生である。
ヨーロッパではアイルランドの事例が興味をひく。1995年から2007年までアイルランドは目覚しい経済発展をとげ、アメリカの投資会社モルガン・スタンレーは、東アジアの経済発展著しいシンガポール、香港などの新興諸国を ”東アジアの虎” となぞらえたことに倣いアイルランドを ”ケルトの虎”と持て囃した。
英語能力をもつ労働者、英語が通用するため外国からの投資のしやすさなどが外国資本、特にアメリカの資本を呼び込み発展の原動力のひとつになった。
グローバル化が極端にすすみ2007年時点でアイルランドの輸出に占める外国資本の割合はが97%にまでなった。
景気が良く労働者の賃金が安いうちはいいがこれらが逆回転しだすとグローバル資本は容赦なくより良い投資先を求めて逃避する。
アイルランドはその洗礼を受け2008年以降不況のどん底に陥った。
一国の経済発展は種々の要因によるため一つに帰することは出来ない。
だが上記事例を見る限りグローバル化社会にあっても英語公用語と経済的発展の関連性はとても密接不可分などとはいえない。
少なくとも英語能力が高いというだけで経済発展が約束されるわけではないことがわかった。
そうであれば明治の初期 森有礼が公用語としての日本語にたいして抱いた懸念は杞憂であったことになる。
経済的にはこのように結論づけられるかもしれないが、言語は経済以外にも人々の行動様式に与える影響が大きい。
言語の本質について、公用語との関連で考えてみたい。
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